純一さんいわく、買い物をするにしてもネットで値段を確認するそうで、コンビニの利用はなるべく控えて、スーパーでものを買い、さらに値段の安いスーパーを探すなど倹約につとめてきたそうですが、一方で妻はどうでしょうか? 例えば、「友達と会うから」と言っては豪華なランチやエステに興じたり、「パワースポットだから」と言っては年に3回も伊勢神宮まで参拝しに行ったり、目にあまるような出費を繰り返していたよう。
そのたび、妻は「私は生まれ変わったわ。同じことを二度としないって」としおらしい態度をとるのですが、その約束が守られた試しはありません。ミシュランで星を獲得した高級店で優雅にランチを満喫したり、豪華客船に乗って伊勢神宮で停泊する憧れのプランに申し込んだり、1年分のエステのチケットを買い込んだり…ほとぼりが冷めると元の木阿弥。散財を復活させたのです。
つまり、これ以上、結婚生活を続けると純一さんが妻の浪費癖に悩まされることは確実です。調停委員は妻の浪費癖を「修復する余地はない」と判断したようで、妻に対して「もう旦那さんを解放してあげたらどうですか?」と投げかけた模様。妻は今まで何回も約束を反故にしてきた手前、「もう迷惑をかけないから」と口が裂けても言えず、しぶしぶ離婚に承諾したようです。
このように、エピソードの優先順位を工夫することで妻から離婚の同意を取り付けたのですが、調停の場合、先に離婚の可否、後に離婚の条件(養育費、慰謝料、財産分与など)を決めるという順番を守ってください。
妻が離婚を拒否しているのに、離婚の可否と条件を同時に進めると大変です。妻の希望する条件を受け入れない限り、離婚できないので、妻が「退職金、貯金、家、すべてくれたら考えてもいいわ」などと無理めの条件を提示してきても、どうしても離婚したいのなら承諾するしかありません。
純一さんの場合、先に離婚を決定付けてから条件面を詰めたので、年金分割の按分割合は50%、自宅の売却益は折半、退職金と貯金は勤務期間と結婚期間の重複部分のみ折半という可も不可もない内容で折り合いがついたのです。
離婚寸前の夫婦の間に信頼関係は存在しません。協議の段階で疑心暗鬼に陥っている妻にいくら正論を言っても「あいつのことは信用できない」と一蹴されるだけ。これは夫だけでなく夫側の人間…両親や兄弟姉妹、友人や弁護士でも同じです。
そのため、調停の段階で中立の第三者が代弁してもらうことが効果的ですが、調停委員は夫との間に利害関係がないので適任です。なぜなら、妻は「調停委員が言うなら」と、ようやく聞く耳を持ってくれるのだから。
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