ホンマでっか池田教授が論破、「純粋な日本人」などいない証拠

 

外来生物が日本に入ってきて在来の生物と交雑することを、遺伝子汚染といって忌み嫌っている人たちがいるけれども、生物種にとって交雑は生き残るための大切な出来事で、純血を守っている種は環境変動によって滅びる確率が高くなる。京都の鴨川水系には巨大なオオサンショウウオが生息しているが、その90%以上は在来種のオオサンショウウオとチュウゴクオオサンショウウオのハイブリッドである。50年ほど前に食用として持ち込まれたチュウゴクオオサンショウウオが逃げ出して野生化して在来のオオサンショウウオと交雑したようだ。ハイブリッドの方が純血種よりも鴨川の環境に適応的なのだと思われる。あと数千年も経てば、日本中のオオサンショウウオはすべてハイブリッドになるに違いない。

なぜ一部の人間は純血を守ることにそれほど拘るのか私にはよく分からない。アーリア人の純血を守ろうと無駄な努力をしたナチスも結局滅んでしまったわけで、純血の人種というのは幻想なのだ。もちろん純粋な日本人などはいない。日本人は、基本的には、古くこの列島に渡ってきた人たちの子孫、いわゆる縄文人と、比較的最近、水稲農耕技術と共に大陸から渡ってきた、いわゆる弥生人の混血で、それ以外にも様々なDNAが混ざったハイブリッドで、単一の日本民族などというのは妄想なのだ。

異質なものが交わった時に新しい可能性が開けるのは生物の進化ばかりでなく言語もそうであるようだ。お互いに異なる言語を喋る人が、交易などで意思疎通を図るために編み出した言語をピジンというが、ピジンは互いの言語が混じったちゃんぽん言語で、一貫した文法体系を持たない。しかし、ピジンを聞いて育った子供たちは、ピジンを基に一貫した文法体系を持つ独自の言語を作り上げる。これをクレオールという。新しい言語が2つ以上の異なる言語の交雑により生じることもあるのだ。日本語は系統関係がよく分からない孤立言語だが、クレオールかもしれないという主張もある。(メルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』より一部抜粋)

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