様々なメディアがこぞって森氏の「問題発言」を取り上げていますが、本当に正しいのはどの発言なのか、よくわかりません。マスコミの切り取り報道は今に始まったことではありませんので、気をつけなくてはなりません。
それについても、連日、森氏の言葉を糾弾するばかりか、森氏を擁護する発言すらも「問題発言」として、メディアでは評論家、野党政治家、元アスリートなどが批判の大合唱を繰り返しています。日本人の人権意識が高まってきた表れでしょうか。
そうだといいのですが、私はあまり期待していません。日本に半世紀以上暮らしている私はだいぶ慣れましたが、日本では人権平和を声高に叫び、政治家などの問題発言を糾弾する人に限って、別のもっとひどい人権問題について、一言も発しなくなることをよく見かけるからです。
典型なのは、中国によるチベット、ウイグルへの弾圧や、台湾への武力恫喝などです。私もこれら中国の人権弾圧について、日本国内で訴えてきましたが、人権派といわれるマスメディアや文化人、言論人ほど関心を示さないのです。
とくに政治家などが人権に関する失言を行ったときに、ここぞとばかり糾弾する人、日本の軍事力増強に反対する人ほど、その傾向が強いと思います。人権問題への意識が高いのかと思いきや、中国でのチベット問題やウイグル問題、中国の核武装などにはまったく関心を示さず無視する。
中国の脅威にさらされてきた外国人や少数民族が、そんな「偽善的」な日本人にがっかりすることも少なくありません。
新疆ウイグル自治区では100万人のウイグル人(「ウイグル族」という呼び方は、ウイグルの人々は嫌っています)が強制収容所に入れられ、思想改造や強制労働を強いられているとされていることは、すでに世界的な「常識」です。また、約10万人のウイグル人男女が不妊手術を強制させられていると報じられています。
アメリカやカナダは、中国のウイグル弾圧を「ジェノサイド」と認定しました。中国がナチス・ドイツのユダヤ人弾圧と同じことをやっていると、公式に宣言したわけです。
テレビ局にしても、これだけ森発言を問題視するほど人権意識が高いのですから、中国の人権弾圧に抗議して、「北京オリンピックをいっさい放送しない」と宣言する放送局があってもいいはずです。それともやはり、金のためには人権などどうでもいいのでしょうか。