北京オリンピックのスポンサー企業も同罪です。
繰り返しになりますが、私は、日本の平和運動や人権活動というのは、非常にいかがわしいと思ってきました。というのも、自分と意見が合わない相手を批判するための単なる「道具」として平和や人権を利用しているだけで、本当に平和人権を尊重しているわけではないようだからです。
多くの反戦平和団体や人権団体は、日本で反戦平和を叫ぶものの、中国の核武装や軍事増強、人権弾圧に対してなにも言わないことです。日弁連などはその典型でしょう。完全にダブルスタンダードです。
とくに左翼の中にはそうしたダブルスタンダードが強いため、「日本の左翼は『中国の核はきれいな核だ』と思っている」と、保守派からよく揶揄されています。
今回、森喜朗氏1人の発言だけでもこれだけ人権問題として大きく取り上げたメディアや政治家などが、ジェノサイド認定されている中国の人権弾圧を論じず、何事もないかのように北京オリンピックに協賛し、莫大な放映権料を支払い、礼賛するということがあれば、完全なダブルスタンダードです。中国のカネや利権のために、ウイグル人やウイグル人女性の人権問題をなかったことにするということは、完全に良心の欠如です。
いま、正義ぶって森氏を糾弾している人たちのなかで、どれだけが中国の人権弾圧を批判するでしょうか。それとも中国についてはスルーするのでしょうか。私はじっと見ています。
台湾では、中国から渡ってきた国民党による「白色テロ」により、多くの台湾知識人が虐殺されました。世界一長い戒厳令が敷かれ、密告が奨励されました。そのなかで、仲間を裏切って密告するようなケースも多くありました。
悲しい話ですが、密告しなければ同罪となり自分や家族の命が危うくなるというなかでは、仕方なかった部分があるとは思います。また、現在の中国でも公の場で政権批判をすれば、あっという間に逮捕されてしまいます。
そのような環境にあれば、中国を糾弾するのは生命にかかわることですが、日本では中国批判をしても危害を与えられる心配はありません。にもかかわらず、森氏の発言を声高に批判しながら、中国の人権弾圧に声をあげないならば、結局、人権問題などどうでもいいと考えているということなのでしょう。
そういう人たちは、偽善者で変節漢であり、いざとなれば簡単に裏切ります。絶対に信用してはいけない人たちです。
もちろん、政治とスポーツは切り分けなくてはいけないという意見もあります。しかし、オリンピックを政治利用しているのは中国のほうです。習近平は、北京が世界で唯一、夏冬両方の大会を実施した都市となることを目論んでいます。
また、北京オリンピックの試合会場を視察し、準備が順調に進み、多くのウインタースポーツ種目が初導入され、世界の先進レベルに達したのは、「中国の制度の優位性を具現化するものだ」と語っています。つまり、「中国共産党独裁こそが世界でもっとも優れている制度だ」と宣伝しているわけです。
北京オリンピックに協力するということは、意図するかどうかにかかわらず、この中国の独裁体制、ウイグルやチベットなど少数民族弾圧、香港の人権弾圧などを正当化することにつながってしまうわけです。それは1936年のナチスドイツ政権下のベルリンオリンピックの二の舞になるということです。
1年前のことを思い出してみれば、WHO(世界保健機構)のテドロス事務局長は、中国・武漢発の新型コロナウイルスについて危険性を軽視し、「貿易や渡航は抑制すべきではない」と発言し続け、中国の責任を追求するどころかその対応を礼賛し、さらには緊急事態宣言をなかなか宣言しなかったことで、世界に新型コロナウイルスの蔓延を招いてしまいました。
テドロス事務局長には、エチオピアの外相時代に中国から多額の資金援助を受けたために中国に頭が上がらないとも言われています。
● WHOが「中国寄り」と言われたワケ…世界を翻弄した「迷走」の数々
WHOを検証する独立委員会は1月18日、WHO執行理事会に提出する中間報告を発表し、中国とWHOの初動対応を批判しました。WHOが緊急事態宣言を避けたい中国の思惑に忖度して、宣言を見送ったと言われています。
● WHOを検証する独立委、中国のコロナ初動対応批判 WHO自体についても疑問視
北京オリンピックや中国での金儲けのために人権問題を蔑ろにすれば、WHOやテドロス氏と同じそしりを受けるでしょう。
森喜朗氏は謝罪撤回会見で記者からの質問に対して、「面白おかしくしたいから聞いてるんだろ?」と逆ギレしていましたが、北京オリンピックを問題視しないのならば、人権問題を政権批判に利用しているだけ、叩きやすい人物を袋叩きにして「面白おかしく」喜んでいるだけで、森氏の言ったことの正しさを証明することになってしまいます。
中国は日本に対しても核の恫喝を繰り返していますが、日本のマスメディアはほとんど知らないふりを決め込んで報じません。中国の官製メディアは沖縄を「日本のものではない」と公然と語っていますが、そうしたこともまったく報じないのです。その一方で、インターネットではそうした真実が伝えられているため、ますますメディアから国民が遊離していっています。
今後、多くの人に中国での人権弾圧の実態を知ってもらいたいと思うとともに、メディアや識者がどのように北京オリンピックを論じるか、誰が信用できない人物か、注意深く見守っていきたいと思います。
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※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年2月10日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
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