すでに10年近くが経過した「大津いじめ自殺事件」の最高裁への上告が1月25日に棄却され、400万円の賠償命令が確定しました。無料メルマガ『いじめから子供を守ろう!ネットワーク』を発行する、同ネット代表の井澤一明さんは、今回の決定について今後のいじめ事件の判決にも影響するであろう「納得できない部分」を指摘しています。
大津いじめ自殺事件の最高裁判断
2011年10月に起きた滋賀県大津市のいじめ自殺事件。すでに10年近くの歳月が過ぎ去りました。2021年1月25日には、最高裁が上告を退け400万円の賠償命令が確定したとのニュースが流れました。
大津地裁は、自殺はいじめが原因だったとし、加害者2人に合わせて3,700万円余りの賠償を命じましたが、その後、大阪高裁は自殺の原因はいじめと認めましたが、賠償金については
- 両親が生徒を精神的に支えられなかったこと
- 大津市が和解金を支払っている
等として、賠償額をおよそ400万円としました。今般、最高裁が、上告を退けることで、2審の大阪高裁の判決が確定したのです。
被害者の父は「いじめは相手を自殺に追い込む危険な行為だと司法が判断したが、息子が亡くなった9年3か月前は、そうは考えられていなかった。事件は司法判断の流れを変え、被害者の救済に大きくかじを切るきっかけになったと思う。判決がいじめ問題の解決につながっていくことを祈ります」と話したことが報道されています。
また、原告側の弁護士は「いじめで自殺することは特異的で、損害は通常生じるものとはいえないというのが、これまでの判例だった。今回、高裁と最高裁が通常の損害だと認めたことで今後立証のハードルが下がることになり、極めて先駆的な国内初の判例になった」と評価しています。
確かに「自殺の原因はいじめだった」と認定されたことは、今後のいじめ事件による訴訟に対して、大きな方向を提示したと言えます。ですが、「いじめによって精神的に追い詰められ、自殺するまで追い込む」というパターンは、起きうることであり、大津いじめ自殺事件の以前において、「自殺の原因はいじめではない」との判断がくだされていたという現実があり、それ自体が異常なんだと言わざるをえません。司法関係者にとっては、それが常識なのでしょうが、言わせてもらえば「やっと正常な判断を下せるようになったよね」というだけのことです。
ここまで来るのに、何年もかかり、多くの子供達の悲しみ、苦しみの上での判断だとするならば、「遅すぎる」としか言いようがありません。
さらに、今回、「被害者の親にも責任があった」という判決のように見えるところがあります。被害者の親だからと言っても、普通の人間のはずです。感情もありますし、人生の中には言い争いや喧嘩をすることだってあったと思います。完璧な人間などいないはずです。「いじめられている子をサポートできなかったから、賠償額を減額する」などという、とんでもない理論がまかり通って良いのでしょうか。裁判官から見たら当たり前なのかもしれませんが、納得できません。