日本しかない。クーデターで袋小路に陥ったミャンマーを救える先進国

 

皆にとって期待外れだったスーチー政権

ところで、ここで批判を覚悟で問いを立ててみたいと思います。

【本当に国軍による軍政は悪なのでしょうか?】

この問いの起こりは、軍政を終焉させ、ミャンマーの民主化を進めるきっかけになった2010年11月以降のティン・セイン政権の功績です。

ティン・セイン大統領は、それまで軍政首相として権力の座についていましたが、民主化とは名ばかりの軍政の看板の架け替えと揶揄されたのとは反対に、その後のミャンマーの民主化を一気に進める基礎を築く大改革を断行しました。政治犯の大量釈放による融和の進行、少数民族との対話、そしてスー・チー女史を政治の表舞台に引っ張り出しました。

結果はどうだったでしょうか?

5年の統治の後、スー・チー女史の揺るぎない民主化への道を切り開きましたが、何よりもミャンマーを世界最後の成長フロンティアに成長させ、優秀な国軍スタッフを閣僚に布陣して、日本も投資した工業団地の建設や投資環境の整備として管理変動相場制を導入して、外貨獲得の素地を作り、経済の透明性を確保しました。

スー・チー女史のNLDに政権を譲り渡すことになってしまいますが、その後の5年間、NLD政権は、ティン・セイン政権の成し遂げた内容に比べると、期待外れであったとも言えるかもしれません。

とは言え、その“期待外れ”とは、誰から見た視点でしょうか?ミャンマーを支援した日本や欧米諸国でしょうか?それともミャンマー国民にとってでしょうか?

恐らくそれら皆にとって期待外れだったのではないかと私は考えます。

国民にとっては、憲法的な制約を付されたという状況はありますが、国軍の影響力を削ぐことが出来ず(恐らく気を使い過ぎた)、ロヒンギャ問題の際にも、対応が不十分になってしまいました。

これは、ティン・セイン政権と違い、政策立案と実施のプロ集団の欠如または不足が理由として挙げられるのではないかと思います。

そして、昨年11月の総選挙でやっと国軍の勢いを削ぎ、2月の国民議会を皮切りに憲法改正を!と意気込んでいた矢先、クーデターでその可能性を摘まれてしまいました。

しかし、今回のクーデターについては、どれだけ贔屓目に見ても、非常にまずかったと思われます。また、ここ1か月ほどの、デモへの対応も、暴力を盾に反対勢力を抑え込もうという、前時代的な対応になっており、フライン総司令官以下、国軍内での混乱が見て取れます。

ただ、批判はよいのですが、かといって「ならばどうする?」のでしょうか。

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