日本しかない。クーデターで袋小路に陥ったミャンマーを救える先進国

 

対応に苦慮するバイデン政権

では、周辺国ASEAN諸国はどうでしょうか?ASEAN諸国については、以前にもお話しした通り、相互内政不干渉の方針を各国とも堅持し、良くも悪くも、ミャンマー情勢とは距離を取っています。

例えば、フライン総司令官から支援を要請されたタイのプラユット首相は、即座に支援要請を拒否しています。表向きは内政不干渉ですが、実際には、「緊急事態宣言下で権力の座に付く自身の正統性への国内での激しい非難の火に油を注ぐようなイメージは避けたい」との判断があったようです。

フィリピンも、インドネシアも突き放す発言をしているのは、形式上、どちらの大統領も民主的な選挙で選ばれていますが、その統治手法は強権的とも言え、国際社会からの非難の矛先が自らに向くのを、同じく、嫌ったのではないかと思われます。

そして、マレーシアに至っては、ミャンマーから非難してきた1,100人ほどの“難民”を22日にミャンマーに「不法移民」として強制送還しました。UNHCRやHuman Rights Watchなどから非難され、最高裁が引き渡しを止める決定をしましたが、時すでに遅しでした。これもミャンマー情勢と距離を置きたいとの思惑があったのではないかと見ています。

では、欧米諸国はどうでしょうか?欧州については、先述の通り、口は出しても実質的な制裁は発動しないことから、ここでは言及しません。

アメリカについては、対応に苦慮している様子が窺えます。人権尊重という原理原則を掲げるバイデン政権としては、国軍によるクーデターとスー・チー女史らの軟禁は看過できないものであるため経済制裁を課していますが、あまり効果を発揮できるものではないと思われます。

国軍の幹部とその資産を制裁対象にしていますが、制裁の度合いも段階的に、様子を見つつ上げるというレベルのもので、正直、中途半端に思われます。

そのような状況を生んでいるのが、ミャンマーというアジア太平洋地域における影響力拡大のための戦略拠点が、プレッシャーをかけすぎることで(ロヒンギャ問題の際のように)、ミャンマーが一気に中国に傾倒し、ミャンマーがRed Teamの仲間入りをする状況を何としても避けたいと考えているということです。

冷戦時代の対ソ戦術と全く同じロジックに思えますが、結果、アメリカによる対ミャンマー制裁も中途半端に終わっており、フライン総司令官への決定的な圧力にはなっていません。

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