バイデンの皮算用。中国という「敵」は分断の米国を一つにするか?

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先月25日、イラクで起きた米軍関連施設攻撃への対抗措置として、シリアの親イラン武力勢力の施設を空爆したバイデン大統領。自国及び同盟国の不利益に対しては武力行使も辞さぬという姿勢を明確にしたバイデン政権は、中国についてはどのような姿勢で対峙するのでしょうか。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者で日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さんが、さまざまな要素を勘案しつつ、米新政権の対中政策の読み解きを試みています。

バイデンの政策=(トランプの政策+オバマの政策)÷2

米バイデン政権の政策が徐々に固まってきたようである。このバイデン政権の政策を見て、日本の今後の政策を考えたいと思う。

バイデン大統領は、16日に中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで主催した対話集会に出席し、新疆ウイグル自治区や香港での人権弾圧、台湾への脅迫について、「文化的に国ごとの異なる規範がある」と発言し、中国の暴走を容認するかのような発言をした。

この発言と同期を合わせて、アメリカ国防総省のカービー報道官は「尖閣諸島の主権について明確に日本を支持する」と述べたことについて、アメリカ政府の立場に変更はないとして、自らの発言を訂正した。つまり、尖閣に関する米政府の公式見解は従来通り「日本の施政下」として、主権の存在を明確化していない。

この裏を調べていたら『新X論文』があり、この論文は米国の元外交官・政府関係者が書いた匿名論文である。2021年02月26日「『新X論文』:長期的な対中戦略の必要性』」の松川るい氏のコラムから該当部分を借りたが、

中国共産党ではなく習近平が強権的拡張主義な中国の問題の本質。したがって、共産党政権打倒ではなく、習近平降板又は習近平に策をより協調的に変更させることを米国の戦略目標とすべし。そのための手段として、中国内政に習近平に批判的なエリート達に影響を与えるべし。「2013年までの中国」に戻れば米国は中国と協調して共存できる。

 

実現のための手段として、米国自身の力を回復し、かつ、米国の同盟国・パートナー国と連携して経済的、政治的な中国依存を減らし、軍事的にはレッドラインを明確にして中国の行動を抑止する。これを何十年か続ければ達成される。

と。

というように、どうも「親中派が入り込んだか?バイデン政権の中国『柔軟対応』の裏側」で述べた「是々非々」の内容の具体的な政策は、このようなことになりそうである。

ということで、先のバイデン大統領の発言も、対中国では、あまり厳しくしない方向のようである。そこがトランプ前政権とは違う。

オバマ政権に近い印象でもある。敵対的になりすぎて戦争もできないために、中国との間合いをどう取るのかが問題視されているのである。

しかし、イラクの米軍拠点を狙った先週15日のロケット弾攻撃への報復として、シリアで親イラン武装勢力への空爆を行い、軍事力を使う方向のようである。中国へのけん制でもあると見る。台湾や南シナ海、東シナ海でレッドラインを越えたら、軍事力の使用もするということであろう。

一方、国内政策では、トランプ前政権が導入した米国永住権(グリーンカード)の発給停止措置を解除した。メキシコ国境沿いの「壁」建設停止や、不法移民の市民権取得に道を開く関連法案の提出など、バイデン政権と民主党は厳しい移民規制からの政策転換をする。

中国の人口減少で今後、GDPの伸びが鈍化する方向であり、米国も、コロナで都市部の人口減少になり、移民規制を排除して人口増加を維持するようである。これにより、経済規模の逆転を防ぎたいのである。

金融業界への規制緩和でも、トランプ前政権の金融規制改革法(ドッド・フランク法)の影響緩和を図る取組みを無効化して、金融証券機関の規制を強化した。証券取引などの規制を強化する方向であり、その一環であろう。

1.9兆ドルの追加経済対策は、下院を通過して上院に送られた。今後上院での審議になる。上院は共和党と民主党が50対50であり、民主党の議員に造反が出ると通らないが、順調に行けば3月中旬には議会と通ることになるが、規模が大きいと共和党や一部民主党議員からの反対も強い。

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