嘘つきは東北新社か総務省か。国会質疑証言が炙り出す不都合な真実

 

国会の質疑をもとに想像を巡らせてみた。ジャスダック上場会社であり、いつの間にか外資比率が高くなっていたにもかかわらず、東北新社の担当者は外資規制について精緻な検証を怠り、外資比率は20%未満として認可を申請した。「計算を誤った単純ミス」という中島社長の説明は本当だろう。

申請を受けた総務省が外資比率をチェックし、違反を指摘するべきなのだが、なぜかそうはならず、そのまま認可されてしまった。このとき総務省側に「わずか0.75%の外資超過なら目をつぶろう」という判断が働いたのかどうか、それはわからない。そうだとしたら、菅首相(当時は官房長官)への忖度があったとしか考えられない。

外資比率がオーバーしているのに気づかず認定してしまったのなら、総務省の審査が、いかにいい加減かということになる。

いずれにせよ、認定を受けてしまい、後に外資規制違反に気づいて困ったのが東北新社だ。

さてどう対処したものか。木田氏らは親しくしてきた情報流通行政局の鈴木総務課長に相談してみることにした。それが中島社長の言う「8月9日ごろ」のことだ。説明を受け、放送法違反の状態にあることを確認した以上、鈴木氏も放ってはおけない。

たぶん、子会社をつくって事業を承継するというアイデアは鈴木氏が授けたものではないだろうか。その場合の親切心にも、やはり菅首相に関わりの深い会社だという忖度が働いていたにちがいない。

3月16日の衆院予算委員会で、後藤祐一議員(立憲)は「なぜ大臣はほんとのこと言えと言わないのか。それをさせないのは大臣の責任。どんどん大臣の首がしまってきている」となじった。

武田大臣をして、「記憶がない」ことにしろ、といわんばかりの態度に駆り立てたものは、総務省がからんだ脱法行為とのそしりを恐れたということだけではないだろう。

相手が菅首相と全く無関係な会社であれば、自分が総務相に就任する前の出来事として、淡々とふるまうこともできる。「本当のことを言え」で済んだかもしれない。しかし、現実は違う。菅首相が全てを明らかにせよと言わない限り、武田大臣は菅首相を守るポーズをとり続けるのだろう。

もはや2017年の問題ではない。今の問題だ。大臣以下、総務省ぐるみの隠ぺい工作が、現在進行形で繰り広げられている。

image by: 首相官邸

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