無礼千万。日米首脳会談の質疑応答で露見した米国マスコミの本性

reizei20210420
 

バイデン大統領が初めて海外首脳を自国へ招く形で実現した、日米首脳会談。メディア各社によりさまざまな分析や評論がなされていますが、識者はどのように見たのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国に軸足を置き両国を取り巻く問題を注視してきた冷泉彰彦さんが、会談後に行われた共同会見を18項目に分け整理し、各々について解説。その上で、今回の会談における問題点の指摘を試みています。

菅=バイデンの「対面首脳会談」をどう評価するか?

4月16日(金)に行われた菅義偉総理とジョー・バイデン大統領の第1回首脳会談については、色々な論評が出ています。現時点での評価をするのであれば、

「台湾海峡を中心とした中国とのパワーバランスについては現状維持の意思を明確に示し、中国もそれを冷静に認識したと思われる」

「『環境、国際分業、コロナ』の3大実務協議については予想通り行われてお互いに相手の立場が理解できた」

ということで、この種の首脳会談としては、珍しく想定通りのコミュニケーションが実現したと思います。

内容的には多岐にわたりますので、主として共同会見について箇条書きで整理しておこうと思います。

1)当初は、共同会見は4:15からと発表されていた。4:16までサキ報道官の定例会見があり、すぐに共同会見が始まるのでということで、報道官は慌ただしく会見を打ち切った。だが、結局、実際に首脳がローズガーデンに登場したのは5:05。つまり50分ほど予定より長くかかったということになる。

2)バイデンのステートメントは、例によってプロの仕事。「感染対策はした、対面はいい」から始まった。菅総理については「ヨシ」と呼ぶこと数度。これは自然。「21世紀の世界でも民主主義は競争力がある」という文言は、キレイだが、どこか受け身の印象。中国やトランプ現象を前提に含んだ表現にしても、もう少し押しの強い表現はできないものか。

3)パンデミックについては、ここでは美しい建前論。ワクチン・パートナーシップを加速、長期的な医療面での安全保障、WHOとの協調で次のパンデミックを防止…ということで、日米協業するという美辞麗句で「ワクチン供給」を約したことを示唆。

4)イノベーションを日米で。民主主義という共通規範がある。5G、サプライチェーン、クワンタム・コンピューティング、AI…これも美辞麗句だが、そのほとんどが「日本に残存する技術」をアメリカが吸い上げるだけの話に聞こえる。もっとも、日本側に投資余力がない以上は、そうするしかないわけだが。

5)環境面では、グラスゴー・サミットで取り上げる。2050ゼロに日本はコミットということで、この問題では、小型原子炉構想、水素構想、トリチウム処理水なども話合われたに違いないが、発表はなし。

6)日米の人の交流については、3.11の10周年ということで、バイデンは「自分は直後に行った」「日米のジョイントでの努力を名誉に思う」という震災に関する話題があり、加えて、マンスフィールド・プログラムの再開についても言及。また松山英樹選手のマスターズ勝利への祝意。ここは、こんなものという印象もある一方で、「それだけ?」という感じも。

print
いま読まれてます

  • 無礼千万。日米首脳会談の質疑応答で露見した米国マスコミの本性
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け