人気心理学者が論破する「人間の脳は変化を嫌う」説の大ウソ

 

【マイルドな変化】

上記の007に出てくるようなサディスティックな拷問とは逆に、性的な愛撫やプレイを工夫することで、人類はより多くの快楽を手に入れてきました。人間にとっての性が単なる生殖のための本能的行動に留まることなく、文化的で親密なコミュニケーションへと進化した背景には、新鮮な体験を求める人間の好奇心や遊びの精神が存在しています。

同様のことは、人間が楽しんでいる各種のスポーツや様々な趣味、芸術や文化活動、知的な創造活動などにも当てはめられることです。これらを発展させ、活性化させているのも、ある種「マイルドな変化」を求めて止まない人間の本能的な「動機」であることは確かです。

転んでも倒れても立ち上がり歩こうとする幼児のように、人間は、自分や仲間、社会、文化、文明の「変化」を求め続ける稀有な動物なのです。

繰り返される自動車などのモデルチェンジやファッションの流行、メディアを総動員して巧みに囁きかけてくる新たなライフスタイルへの誘惑といった社会現象は、人間たちが抱え込む「変化への欲求」を満足させるための必要悪?とも言えるのではないでしょうか。

ただ、これらの「変化」があまりにも急激になり過ぎると、かつてアルビン・トフラー(Alvin Toffler 1928~2016)が『未来の衝撃(Future Shock)』(1970)によって指摘したように、急激な変化そのものがストレスの原因となり人々の心を蝕むようになるのです。

ですから、「人間の脳にとって変化は苦痛」といった考え方(縷々説明した通り、これは誤解なのですが)をあっさり受け入れる人たちは、自分自身が絶え間なく変化することに疲れ果て、軽いノイローゼ状態になっているのかもしれません。自分が変わることを必要以上に怖れる若者も増えています。

そんな「変化過敏症」!?に陥ってしまった人たちに、私が子守歌代わりに薦めるのはビリー・ジョエル(Billy Joel)の『素顔のままで(Just the Way You Are)』です。ビリーの優しい歌声が、変化し続けることに疲れ傷ついた心を癒してくれるでしょう。

I need to know that you will always be
The same old someone that I knew
   ————–
I could not love you any better
I love you just the way you are

 

僕がよく知っている
昔のままの君でいて欲しい

   ————–
これ以上愛せないくらい
ありのままの君を愛しているんだ

 

『Just the Way You Are』 Billy Joel

image by: Shutterstock.com

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