なぜこの方は答えが変わったのか。ここから私の解釈を説明します。いつも申し上げることですが、ビジネス数学は正解がありません。いろんな解釈があり、いろんな解がある。ぜひ皆さんもそのことを楽しんで欲しいと思います。
話を戻します。
まずは箱Aと箱Bの違いを整理しましょう。
仮に箱Aで1,000回のくじを引くとします。大雑把に考えて、あたりは500回引くと予測できます。
では箱Bで1,000回のくじを引くとします。大雑把に考えて、あたりは510回引くと予測できますか。つまりこちらの方を選ぶ方が賢いですね。
続いてQ1とQ2の違いを整理しましょう。
Q1は1回だけくじを引けること。
Q2は10年間ずっと毎日1回だけくじを引けること、つまり3,650回もくじを引けることになります。
加えてQ1はうまくいっても得られるものは僅か100円。
しかしQ2はうまくいけば365,000円を手にできます。
Q2においては箱Bを選ぶ方が合理的な選択であり、途中で箱Aに“浮気”してしまうことは確率の高い方を選ぶという判断基準を守らない行為、つまり「ブレている」ということになるのです。
得るものが小さい場面での意思決定はブレても大きな影響はありませんが、得るものが大きい場面での意思決定はブレずに確率に素直になった方が賢いのではないかということです。
「迷わず箱Bで10年間やります」とおっしゃったのはそういう心理が働いたからではないでしょうか。そしてそれは確率思考の観点から強く推奨するものです。
つまり、もし人生において確率の高い方を選ぶという判断基準を持つなら、それは徹底して続けるべきだということです。短期的なものや重要でないものならその場でどう決めようと自由です。しかし長期的なものや重要なものは確率の高い方を選ぶという姿勢を貫き、それがブレない方がいいのではないかということです。例えば長期的な投資はリスクの小さい銘柄を選び、短期的な結果に一喜一憂することなく、“浮気”せずに継続することが大事だといいます。
この授業で主題にしているビジネスや人生というものは、私たちにとって明らかに長期的で重要なものです。続ければ100を手にすることができるのに途中でブレてしまったがゆえに70しか手にできなかったとしたら、それはとてももったいないことだと思います。
人生は長い。だから確率思考で考え、それを一貫して継続する方がトータルでうまくいくのではないか。私はそう思っています。皆さんも「ブレずにいこう」と思うのなら、それは「確率に素直になろう」と同義だと私は考えます。「ブレる」という極めて心理的なテーマも、確率思考で捉えてみるとこのような解釈もできるのではないでしょうか。
自己啓発書やそのようなセミナーでは「ブレずに軸を持っている人は成功します」といった類の教え(?)が存在するようです。信じるかどうかは皆さん次第ですが、少なくとも確率思考の観点では正しいことを言っているように思います。個人的な考えですが。
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