馬脚を露わした朝日新聞。「普天間基地企画」から見えた“官尊民卑”

 

橋本龍太郎首相、江田憲司秘書官、山崎拓自民党政調会長、田中均外務省北米局審議官、そして小川和久。首相主導で返還合意が決まった直後、知らされたのが梶山静六官房長官、折田正樹外務省北米局長、秋山昌広防衛庁防衛局長、そして沖縄県の大田昌秀知事です。わずか9人!そこまで厳密に絞ると朝日新聞の企画で当事者と言えるのは、かろうじて秋山さんだけなのです。秋山局長の下にいた守屋武昌元防衛次官も、当事者に含めてよいかも知れません。もちろん、軍事問題についての基礎知識を備え、米国政府と対等に渡り合えるのは、『フテンマ戦記』に書いたとおり、私だけだったのです。自分から言いたくはありませんが、それが実態なのです。

朝日新聞の記者の皆さんが、普天間基地問題を扱うに当たって『フテンマ戦記』に目を通していれば、5分間で上記の9人を把握することができたはずです。日本のマスコミは官尊民卑ですから、政府の高位高官や政治家でない私の本など馬鹿にして見向きもしないのかも知れませんが、私の本を読むまでもなく、朝日新聞の縮刷版で当時の動きを追えば、1日もあれば現在までの当事者を洗い出すことができたでしょう。

今回の普天間の企画に当たって、どういう対象に、どのような角度で取材するか厳密に議論していないことは人選を見れば明らかです。ジャーナリズムとしてのガバナンスは存在していません。その挙げ句、日本新聞協会の新聞倫理綱領にある「新聞は歴史の記録者」にもとるような記事の羅列となっています。

朝日新聞には友人知己も多く、私の義理の兄とその兄も50年近く前は朝日の記者でした。商業的に左翼路線をとっている色彩は否めませんが、最もジャーナリズムを意識してきた新聞でもあります。現に『Journalism』という月刊誌も出しています。

それがこのていたらく。朝日の内部で、ジャーナリストの誇りにかけて今回の問題を取り上げ、紙面再生への教訓としてもらいたいと期待しています。以前、誤報を指摘したら、「朝日を批判したから小川は朝日の敵だ」という声が聞こえたので、朝日も落ちたものだと思いました。これではチンピラやくざです。昔から言われてきたように、せめて「えせ紳士」のふりくらいをしてもらいたい(笑)。(小川和久)

image by:Osugi / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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