「お座り」でも「伏せ」でもない。犬のスペシャリストが最初に「名前」を教える理由

 

バック!(下がれ)を教える意味とは?

そもそも、動物の世界で何かの主張をお互いにするとき、お互いは体を大ききみせて、どちらが優位であるかを競います。そして、見合って(視線で会話)間を取り合うんです。もちろん、下がった方が劣勢です。

乗馬を経験した人ならわかると思いますが、馬はまず、人間を試します。あの巨体で、人を脅します。そしてその人間のとった態度によって、馬もその人間を評価するのです。

私が犬に名前の次に、座れや伏せの前に、教えていることは「バック」(下がれ)であることを上に書きました。何の為に??優位に立つためにです。犬より人間が上であることは、絶対に必要ですからね。とくに大型犬を飼っている人であれば、絶対です。別にいままで秘密にしていたわけではなく、普通に当たり前にやっていたことだったからこそ、私も気づきませんでした。

バックナンバーで「スペース」について書いている記事がありますので、それを読んでもらうと、もっと「スペース」の重要性がわかるはずです。場所、スペースを奪えることが、動物社会においては最も重要なんです。自分のスペース、自分の場所、自分の物、自分のエサなど、自分が主張しなければ手に入らない厳しい世界が自然界です。戦ってでも奪わなければ、餌も安全な場所も手に入りません。

犬だって、子供だって、いつでも聞き分けがいいとは限りません。お菓子を見せるときは、犬はそれを貰いたいが為に人に従っているような行動を取りますが、皆さんが見えてないものがあります。犬の心理です。

皆さんが何かを人からもらうとき、頭を下げるはずなんです。「どうもありがとうございます」という心理、気持ちがあれば、それは自然に相手にスペースを与えて、お辞儀をするんです。日本の風習に限らず、アメリカ人でも何かを貰った時に、「THANK YOU!」と言いながら胸を張る人はおりません。ただ、アメリカ人の場合は、「ハグ」をしたり、相手に詰め寄ることもありますが、それはあくまでも風習であって、モノを頂いたときに偉そうな心理を持つ人はおりません。

人間の心理で考えてみましょう。あなたの目の前に、札束を持った人がいます。「座れ」と言われたらどうしますか?そのお金を欲しかったら座りますよね(ここは素直に欲しいと思うと考えてください)??あなたの見ているものは、なんですか?それを持っている人をみますか?それともお札ですか?気持ちはどっちにありますか?

ものすごくお腹が空いているときに、食べ物をチラつかせる人がいると想像してみてください。あなたに見えてるものは、「食べもの」です。それを持っている人への敬意、ありますか?食べたいから、貰いたいから従うのではないですか?

座れや伏せなど、食べものをつかって従わせたつもりでも、犬がどういう気持ち(心理)で従っているのか、考えないんですよ。多くの飼い主は。

私もお菓子でいろんなことを犬に教えます。それは「形」を教える為のものであって、犬の心理をお菓子で変化させることは致しません。「気を反らすこと」なら、お菓子でできるでしょうけど、それもその犬がどれほど、そのお菓子を欲しているのか?という欲求次第です。

私も以前はトレーナーでしたから、パピークラスも教えておりましてね。仔犬に座れや伏せを教えるためには、多くのお菓子を使いました。でも私は「ご褒美」としてのお菓子は与えません。「モチベーション」を利用するために、使うんです。このことについては、来月号に詳しく書くつもりですので、お楽しみに。

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