さて、では私がどうやって「バック」(下がれ)を教えているのか?
下がらせる理由は、先にも書きましたが、私が優位に立つためですが、もう一つ。私が前に一歩出ると、犬が下がる。そこに何が起きているでしょうか?想像してください。犬の前にエサが置いてあるとします。その餌の前に私、反対側に犬がいます。犬はエサを渡したくはありません。だから犬はずっと餌を見ております。ちょうど、皆さんが犬にエサを与えるとき、床に置いてあるエサを目の前にした犬に対してマテを掛けている状態ですよ。
このとき、マテは教えていれば犬は従います。しばらく我慢すれば食べることができるわけですから、犬の心理が目の前のエサにだけ集中している状態であっても、犬はきちんとマテに従います(でもこのとき、犬はあなたのことなんて、考えていません)。いつ食べられるか!??それだけです。
さて、こういう状態のときに、私はマテを掛けません。下がらせるのです。「バック!」です。欲求の心理をコントロールするためにです。
目の前にエサがある状態、つまり「欲求」がすぐ側にあるとき、今話したように、犬には「あなた」が見えていません。↑でも説明しましたよね?札束のくだりです。犬の目の前にある欲求に近いほど、心理は動かないんです。変化しないんです。
下がらせることで、犬は「あなたを見ます」。マセ君を例にしても、目の前にエサがあればもちろん勝手に食べたりしません。私の指示をきちんと待ちますよ。でも、号令待ちをしているだけで、私のことなんか欠片も感じていないんです。この時点ではマセは、目の前のエサを「自分のもの」だと認識しています。早く、早く、号令をかけて欲しいわけですよ。
でも、下がれ!で下がらせることで、目の前の欲求(欲しているもの)から距離を置きます。そのとき、マセは何を感じるでしょうか?下がれ!と言われたマセ君は、下がります(教えていますから)。下がることで、マセ君は「え?」となりますよね?「食えないんですか?」と…。「僕のものではないんですか?」と…エサへの集中が途切れます。
つまりマセ君の期待を裏切るわけです。自分のものだと思っていた餌が、「そうじゃないの?」と考えるわけです。ということは?「それはMASUMIさんのものなの?」と考えます。ギラギラと食べたい一心で「食べてよし」のコマンドを待っていたマセ君に、「下がれ」ですからね。
下がらせることで、「所有者」を考えるということなんです。自分のものだとばかり思っていたマセ君が、「違うんだ…」と所有欲が薄れるということです。
動物同士は、「どっちの物か」という所有権を主張します。さきほどの猫と犬の動画であっても、猫がいることで、先に進めない犬、欲しい物が手に入らない犬…が映ってます。猫が主張しているからなんです。「ここは私の場所よ!」っていう所有権の主張。
何度もいいますが、動物は体でコミュニケーションをとります。自分の体を使って主張をします。おそらく、人間も言語を失えば、同じことをするはずなんです。だから、私は自分の犬たちに、自分の存在をアピールするために、「バック」(下がれ)を教えます。そして今、上に書いたように、犬の欲求に直結したものへの所有欲を下げる為に、つまり私の所有権を主張するために、下がらせるんです。
自分が前に出ることで、犬が下がる。自分が動かないことで、犬が下がる。これを常に無意識にやっているんですね。私は。(メルマガ『ドッグペディア・Doggies 911』2020年11月号より一部抜粋)
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