五輪強行で国民を危険に晒す菅首相がうわ言のように繰り返す「安心安全」

 

ワクチンは感染予防に役立つのか?

もちろん、菅のワクチン信仰は今も続いていて、それは上記発言の前半部分「正に感染対策の切り札と言っても言い過ぎではない」という表現に反映している。

ところが、よく注意して頂きたいのだが、その前段を見ると、この表現の枕言葉となっているのは「発症予防や重症化予防の効果が期待されており」なのである。えっ、それのどこがおかしいの?と思ってしまうあなたは、失礼ながら注意力が鈍っている。どうして菅はここで真っ先に「感染予防や…」と言わないのか。

その答えが次のパラグラフで解き明かされる。「ワクチンの感染予防効果については現時点で明らかになっていない」のである。とはいえ、彼は、自らのワクチン信仰を守るために、感染予防にも効くという「前向きな評価や調査研究があるというふうに承知しています」と付け加えているのだが、それは彼のいつもの“希望的観測”に頼るという性癖の故だろう。

よろしいでしょうか。ワクチンには感染予防、発症予防、重症化予防の3つの機能が期待されていて、菅はこれまでワクチンの普及こそが感染防止の切り札だと言い続けてきた。ところがこの日の会見では、全国民に気付かれないような形で微妙に発言をずらし、軌道修正を図ったようなのである。その動機は不明である。

感染予防<発症予防<重症化予防

このことについては、本誌今年4月5日発行のNo.1095で、ある専門家の意見に依拠して次のように指摘していた。

【関連】知性の欠如も安倍前首相ゆずり。「まん防」菅政権のドロ船が沈没する日

▼このワクチンでは、IgG抗体は出来るが、粘膜でIgA抗体は出来ないので、粘膜面での感染予防は難しい。

▼感染してしまった場合、潜伏期が2~3日と短い場合はIgG抗体の形成と出動が間に合わず発症を防ぐのは難しいが、潜伏期が5~6日などと長い場合はIgGの出動が間に合って発症を妨げる可能性がある。

▼重症化を防ぐ可能性は高い。

つまり、重症化を抑えることにはかなりの効果があり、また発症を防ぐにもそれなりの効果があるけれども、感染を防ぐという効果は必ずしも確認されていない、ということである。

IgA抗体は粘膜に宿って異物の侵入を跳ねつける。しかし今のワクチンではIgAは生成されないので、ウイルスはそこをスルーして入ってきてしまう。それに対して最初はIgMを生成して抵抗しつつ、数日中にIgGを生成して本格的に異物に立ち向かうようになる。したがってこのワクチンによっての粘膜経由の感染は防ぐことはできない。

では、感染防止には役に立たないのかと言えばそんなことはなく、重症者が減り発症者が減れば、それだけ感染拡大の機会は低減し、医療体制の逼迫も軽減されるので、感染防止対策がやりやすくなるという、間接的な効果が期待できるということである。

高野孟さんのメルマガご登録、詳細はコチラ

 

print
いま読まれてます

  • 五輪強行で国民を危険に晒す菅首相がうわ言のように繰り返す「安心安全」
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け