刑務所の面会か。丸川大臣「五輪食事会場に監視員とアクリル板」の不見識

 

3点目ですが、これが最も重要です。例えばですがアメリカの場合は、基本的に「ワクチンをフルに接種」した、つまりファイザーやモデルナのワクチンの場合は、2回接種して2回目の接種から15日経過した人同士であれば、会食時にマスクを外しても良いことになっています。

特にバイデン大統領は、接種率を上げて7月4日の独立記念日には、「ウィルスからの独立」を祝うとしています。この「ウィルスからの独立」というのは、ワクチンによる抗体に守られて「マスク無しのBBQパーティー」や「花火見物」を楽しむという意味だと受け止められています。これを実現するために、巨額の予算が投じられ、医療従事者から軍隊まで動員して、1日300万件の接種を必死になって行っているのです。

EUでも、ワクチン接種者には「ワクチン・パスポート」というアプリで、接種履歴をQRコードで表示させることで行動の自由を保障するという検討が進んでいます。

その上で、五輪の選手団はIOCの方針によって全員が接種を済ませて参加するのが原則となっているわけです。にもかかわらず食事会場で厳しい規制を受けるとなると、強い反発が起きる可能性があります。

4点目は、「バブル方式」との違いです。「バブル方式」というのは、2019年から2020年のシーズンにおいて、アメリカのプロバスケットボール「NBA」が採用した隔離政策です。これは、極めて長期にわたって全国の球団をフロリダ州のオーランドにある、ディズニー・ワールドの施設に隔離し、徹底的に感染防止を行う中で、バスケットボールの公式戦からポストシーズン戦までをやってしまうという大規模な隔離作戦でした。

つまりバブル(球形の泡)の中に、選手、コーチ陣、関係者、その家族を全部囲い込んでしまい、その人々には、そのバブルの中では比較的自由な生活をさせる一方で、外部との交流は徹底して遮断するという措置です。勿論、問題はゼロではなく、選手達の反発もかなりありましたが、曲がりなりにもシーズンの終わりまで「完走」させることには成功しました。

今回の東京五輪については、選手村、練習施設、大会施設だけを徹底して隔離し、選手や役員にはそれの「バブル」の外へ出る行動は禁止するもの、海外の選手達はそのような理解で来日することが予測されます。基本はそれで良いわけですが、その場合に「バブルの中」であるはずの食事会場で「会話禁止」とか「アクリル板」ということになると、これでは隔離の意味がないわけで、この点に関してはワクチン接種済みという問題とは、また別の角度から反発を受ける可能性があります。

ということで、この4点については、非常に難しい、やりにくい問題として横たわっているわけです。

更に全体的な構図として、このまま予定通り2021年7月の時点で五輪を強行すると、非常に難しい現象が起きてくるということです。

それは、「バブルの内側(海外からの選手・役員・報道などの関係者)」と「バブルの外側(東京都民)」の「意識の上での格差」ということです。「内側」の人は、まずワクチン接種をしていますから、自分たちはもっと行動の自由を与えられていいはずという思いを抱えています。その一方で「外側」の人は、ワクチン接種が進まず、変異株の恐怖を感じる中では、海外から参加する外国人には強い警戒感を持っています。

だからこそ、それを「目に見える形」にするため、つまり都民の世論の「安心」のために、選手村の食事会場での「会話禁止」とか「アクリル板の設置」などを、やらざるを得ないわけです。恐らく海外の報道関係者は、自分たちがその不便さを強いられる中で、必ずこの点を突いて批判してくるでしょうし、この「意識の上での格差」というのは大変な難しさとなって来ると思います。

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