離婚を切り出したのは妻。娘の「親権」はどうなる?
とはいえ大志さんも最初から「離婚ありき」ではなく、妻がきちんと謝り、心を入れ替え、反省さえしてくれたら、結婚生活を続けてもいいと気を使っていたのですが、妻は「夫や子どものせいで精神的に追い詰められたのに、なんで私が頭を下げなきゃいけないの!」と反抗したのです。結局、妻は今の家族とやり直すより、ゼロから新しく人生をやり直したいと決めたようです。そのため、大志さんの計らいを断り、むしろ妻の方から別れを切り出しました。
夫婦の間に未成年の子どもがいる場合、夫と妻のどちらが親権を持つのかを決めなければ離婚届は受理されません。海外では離婚しても元夫と元妻が協力して子どもを育てるという「共同親権」を採用している国も多いのです。
一方、日本では「単独親権」が原則なので、片親が1人で大半の育児を引き受ける形です。各自のお金、体力、時間は限られています。現在は大志さんが半分以上を負担している状況。もし、妻が親権を持った場合、半分以上のお金、体力、時間を削られることを意味します。少なくとも今の生活水準を維持するのは無理です。
それなら親権をあきらめ、自分のお金、体力、時間を大事にした方がいい……。妻が「娘を引き取りたい」と申し出なかったため、娘さんの親権について争うことなく、離婚が成立したのですが、本来、親権者は非親権者に対して子どもの養育費を請求することが可能です。しかし、大志さんは妻が親権について異論を唱えないよう、あえて娘さんの養育費を請求しなかったため、妻は経済的にも独身時代に戻ることができたのです。
夫が親権を持つことができる確率は10%(2019年の人口動態統計。離婚時に親権を持つのは夫が1,727件、妻が17,368件)。つまり、夫側が望めば、1割の確率で離婚時、子どもの親権を持つことが可能なのです。
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