間違えがちな「ガバナンス」の捉え方。渋沢栄一が150年前に抱いた社員への思い

 

10年以上前に「渋沢栄一系」の会社の経営トップから「私は、こう言っているんですけどね」というコメントがあった一方、別のタイミングで同じ会社の現場との会合で「上に言っても、ちっとも聞いてくれないのでしょうがない」という声が上がりました。渋沢栄一のDNAを受け継いでいると言っても、それを実感することができない会社でした。

結果的に、このような組織では「俺は聞いていなかった」という緊急事態が生じ、トップが頭を下げて辞任する。組織内の縦横のコミュニケーションがもっと自由闊達であれば、このようなことが起こる可能性はかなり軽減できると考えている自分はナイーブなのでしょうか。

昭和時代の成功体験の遺産である「年功序列・終身雇用」により、縦割りに硬直しているサイロ型の日本組織は未だに数多いです。一方で、従来のドメスティックな体制ではグローバル社会で闘えないと腹をくくって、トランスフォーメーションに取り組む大企業の存在も確かにあります。

「数年前まで他の部署に話を通すためには、まず上に話を持って行って、上同士で話し合い、他の部署の上から担当へと落とすことが慣習であったが、現在は社内SNSを活用して縦の壁を打ち破り、インナーコミュニケ―ションの量と質が爆発的に高まった」という話を某大企業の役員から最近聞きました。しかしながら、このような大企業が多いとは言えません。

良い仕事を真面目に取り組み「一滴一滴の滴」として顧客や社会へ価値を提供する「大河」になる勤めに誇りを持っている方々に渋沢栄一の言葉が励みになることを願います。

□ ■ 付録:「渋沢栄一の『論語と算盤』を今、考える」■ □

『論語と算盤』経営塾オンライン 

『論語と算盤』細心にして大胆になれ

また細事にこだわり、部局のことにのみ没頭する結果、
法律規則の類を増発し、汲々としてその規定に触れまいとし、
あるいはその規定内の事に満足し、あくせくしているようでは、
とても進新の事業を経営し、はつらつたる生気を生じ、
世界の大勢に駕することはおぼつかない。

法律規則というルールを守ることは当然です。しかし、ルールを守っているだけでは不十分であると栄一は訴えています。ガバナンスも同じです。これからの日本社会を代表する企業に、是非とも「進新の事業」を促すガバナンス体制を取ってほしいです。

『青淵百話』会社銀行員の必要的資格

第一 実直になること。
第二 勤勉精励なること。
第三 着実なること。
第四 活発になること。
第五 温良なること。
第六 規律を重んずること。
第七 耐忍力あること。

栄一によると、これは「太平の世に生れた良民、即ち常識的人間」だそうです。つまり、そんなに特殊なことを要求している訳ではないということです。

謹白

image by: 公益財団法人渋沢栄一記念財団 - Home | Facebook

渋澤 健(しぶさわ・けん)

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