【人質事件の裏】軍事技術協力も!安易すぎたイスラエルへの接近

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●F35戦闘機の共同開発という武器輸出

第1に、13年3月に日本は米ロッキード・マーティン社が中心となって開発中の次世代ステルス戦闘機F35の国際共同開発体制に参加することを表明した。この第5世代と呼ばれる次期戦闘機は、余りにも高性能で開発費が膨大になるため、米国のみならず欧州主要国、日本、豪州、イスラエルなどに開発計画の段階から参加を求める形で進められているものの、技術的難問も多く、完成は遅れに遅れているが、ともかくも日本は、それこそ国会での議論もないまま閣議決定だけで、従来の「武器輸出(原則禁止の)3原則」を廃棄して、これに参入した。それを衝き動かしたのは、経団連防衛生産委員会を牛耳っている三菱重工業で、実際に、日本がこの計画に参加することにより同機の部品の40%は三菱はじめ日本が供給することになった。

イスラエルは、この計画に投資面・技術面からは参加しておらず、出来たものを購入する「特別顧客」という資格で参画していて、当初購入確約19機、将来見込み90機を表明している。ということは、アラブ側から見ればどう映るだろうか。米国が主導した新型戦闘機の開発に日本がその部品の4割までもを製造して参加し、それを真っ先にイスラエルが買って、パレスチナやイスラム国を爆撃したりするのに使われる──米イスラエル連合プラス日本でイスラム世界への攻撃を強化しようとしている、と受け止められても仕方がない。それが彼らが「我々の女性と子どもを殺害し」と言っている意味である。

第2に、それ以外にも日本とイスラエルの軍事協力が目覚ましく進展している。昨年5月にはイスラエルのナタニエフ首相が来日し、「新たな包括的パートナーシップの構築に関する共同声明」という大仰な文書が発表され、出来たばかりの日本の国家安全保障局とイスラエルの国家安全保障会議、防衛当局同士の交流、企業や研究機関による共同の研究・開発が進められることが合意されたが、その下で特にサイバー兵器や無人攻撃機についての技術交流が重視されていると指摘されてきた。

こうして、安倍政権は日本の伝統的な「アラブ寄り」という中東政策の基調を捨てて「イスラエル寄り」に転換し、イスラエルがイスラム世界に対して国家的テロを遂行するための兵器技術開発に協力するところまで踏み込んだ。その姿勢がこの事件を招いたのである。

この状況で、さらに集団的自衛権を解禁し自衛隊の海外での武力行使を含む活動に道を拓くということは、例えばイスラム国に対する有志連合の末席に名を連ねているだけでは済まなくなって、米英仏の爆撃作戦の“後方支援”などに積極的に参加することを意味する。そうなれば日本はいよいよイスラム世界の“敵”と位置づけられて過激派による国内テロを含めありとあらゆる危険に直面することを覚悟しなければならない。安倍はこの国をとんでもない道筋に引きずり込もうとしている。

 

『高野孟のTHE JOURNAL』Vol.170より一部抜粋
著者/高野孟(ジャーナリスト)
早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。2002年に早稲田大学客員教授に就任。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
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