子どもの自殺、2021年はすでに270名。コロナ禍の新学期、生きづらさにどう対応?

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収束の見えないコロナ禍という非日常は、大人が考えている以上に子供たちの心を蝕んでしまっているようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、児童生徒の自殺者数が過去最高だった昨年を上回るペースで推移しているという深刻な現実と、コロナ禍で顕在化した教育格差に対する子供たちの悲痛な叫びを紹介。その上で、彼らの命を守るため大人たちが取り組むべきことを考察しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

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子どもは親を選べない

「学校が死ぬほどつらい子は図書館へいらっしゃい」――。

数年前に、神奈川県鎌倉市立の図書館の公式ツイッターが、13時間で4万回以上リツイートされたことを覚えていますか?

“If you feel like shooting yourself , don’t .Come library for help instead.”

夏休み明けに自分を追いつめる子どもが増えることを知った図書館司書の女性が、米国の図書館に貼られている、ピストルを自分の頭に突きつけている男とその周囲に本がたくさん積まれているポスターに書かれていたフレーズを思い出し、「図書館には、問題解決のヒントや人生を支える何かがあるよ」との思いを込めてつぶやきました。

その後、東京都の上野動物園がTwitterの公式アカウントで「学校に行きたくないと思い悩んでいるみなさんへ」「もし逃げ場所がなければ動物園にいらっしゃい」と呼びかけられるなど、9月1日の子どもの自殺は社会問題として注目されるようになりました。

そして、今日。2回目のコロナ禍の「9月1日」をむかえました。

「9月1日問題」が起きていた背景には、

  • 学校でしんどい思いをしていた子どもが「学校に戻ること」のプレッシャーに耐えられなくなったり、
  • 夏休み中に元気を取り戻した子どもが「何も変わっていない現実」にショックを受けたり、

「生きていても仕方がない」――と自分を追いつめ、悲しい選択をしてしまうのではないか?と考えられていました。

しかし、コロナ禍で「いつもどおり」の学習の機会が制限され、友だちと遊ぶこともままならず、親の雇用問題などの影響を直接的に受けるようなり、子どもたちは日常的に追いつめられるようになってしまった。その原因も多様化し、「外」からは見えにくい事態が生じています。

厚生労働省によれば、2021年1月から7月までに自殺した児童生徒の数は暫定値で270人。年間で過去最多の499人となった去年の同じ時期を29人上回っています。

このうち、小学生は7人、中学生は75人、高校生は188人です。

対応策を検討した文部科学省の専門家会議は、在宅時間が長くなり、家庭に居場所を感じられない子どもがいる可能性の他、学校での活動を通して達成感を得る機会が失われたことや、悩みを相談することが難しくなったことが背景にあると分析しています。

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