トランプは米中二国間、バイデンは第三諸国をも巻き込む
しかし、中国を非難するトランプと同じ価値観を持つバイデンは、対抗手法ではトランプと大きく異なる。欧州との関係が冷え込んだトランプは、基本的には独自で中国に対抗してきた。中国との対決姿勢を鮮明にしたトランプは、米国単独で輸出入制限や関税引き上げなどの制裁を連発してきたが、これは二国間内での対立と言えよう。しかし、バイデンは二国間での対立ではなく、第三諸国を巻き込んだ集団安全保障的なスタンスを重視する。
具体的には、バイデンは日本やオーストラリア、英国やフランスなどの友好国や同盟国との連携を重視し、多国間で中国にプレッシャーを掛けていこうとする。バイデンが就任直後から欧州との関係改善に動き出した背景には、多国間中国包囲網を作り出したい思惑もあったはずだ。
そして、この動きは去年初め以降の新型コロナウイルスの感染拡大、香港への非民主化圧力、印中国境での衝突などによって加速化している。中国は依然としてコロナ起源の真相解明で十分な協力姿勢を示していないが、そういった姿勢を堅持する中国に対して、コロナによって多大な被害を被った米国や英国、フランスやオーストラリアなどの対中不信が非常に高まった。
また、人権問題を重視するバイデン政権になって以降は、香港やウイグル人権問題が大きな論争となり、対中国での関係当事国間の結束がいっそう強くなっている。
バイデンもそれを狙っている。バイデンは今年3月に日米豪印の首脳レベル会合“クアッド”をオンラインで主催し、4カ国が結束して中国に対抗する姿勢を示した。バイデン政権下のブリンケン国務長官やオースティン国防長官は政権発足後初の訪問先として日本を訪れ、2プラス2の外務防衛会談で中国を強くけん制した。
また、両長官は韓国でも2プラス2の外務防衛会談を行い、オースティン国防長官はその後インドも訪れ、安全保障上の関係を強化していくことで一致した。今年秋には日米豪印の首脳レベルの会合が再び実施される予定となっている。
トランプ時代のようにはいかぬ。バイデンを警戒する中国
こういったバイデンの動きに対して、中国は警戒感を露にしている。トランプ時代の4年間、中国は米国との貿易戦争を繰り広げてきたが、トランプがある意味で孤立していたことで、中国は欧州との経済関係強化、また中小国への影響力拡大を進めることができたと言える。
しかし、バイデンの対抗手法は第三諸国との関係を維持したい中国からすると厄介なもので、中国としては孤立を妨げるため、自らの陣営固めに注視しなければならない。コロナ禍でワクチン外交を積極的に展開する背景にもそれがあり、中国にとってはトランプよりバイデンの方が扱いにくく、難しい米中対立と言えるだろう。
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