松下さんの人生には、敗戦による壊滅的打撃や、GHQによる公職追放、先述の婦人団体によるボイコット運動等々実に様々な試練が降りかかってきました。
自分では確信を持って挑戦しながら、失敗に終わった経験も少なくなかったはずです。私が入社した年にも大型コンピュータ事業からの撤退が決断され、同期入社の理工系社員はいたく失望したものです。
松下さんはそういう失敗や挫折の中でも常に将来を見据えて新たな手を打とうと懸命でした。
多くの社員やお客さまの声に謙虚に耳を傾ける中で、真のニーズを掴む努力を怠らなかったのはそのためでもあるのです。幼少期に味わった苦労や、そこで得た知恵が試練を乗り越える力となったことも、また確かでしょう。
(本記事は月刊『致知』2017年11月号 特集「一剣を持して起(た)つ」より一部を抜粋・編集したものです)
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