なぜジョブズや盛田昭夫は「学歴」を無視したのか?人材見極めのコツとは

 

ここで、さらに「そもそも論」として話を進めます。その“選ばれた人達”とは、どんな人なのかをよくよく考えてみます。ごく普通に言われるのは「一流大学出の好成績でやる気のある人」という答えが返ってきそうですが、ソニーは一見そのような人材を集めたようにみえますが、盛田昭夫さんは「学歴無用論」を展開しています。

少し極端な例をあげます。繁華街の喫茶店でウェイトレスを雇いたいと思った場合「高学歴のやる気のある人」を求めるでしょうか。そうではなくて「笑顔がかわいい、気配りのできる人」となるでしょう。それが葬儀社だとしたら「気配り」は同じだとしても「笑顔がかわいい」ではなくて「誠実みのある人」となるのでないでしょうか。

アップルのスティーブ・ジョブズの場合についてはどうか。ジョブズの仕事のスタイルは「少人数の優秀な人材とチームを組み画期的な新商品を作り出してゆく」ですが、そこで求めた人材について、「他社からの難民で成り立ってる。ものすごく頭が良いんだが、他社ではトラブルの種になるような連中ばかりなのさ」だと言うのです。

ここで言いたいことは、高い成果を実現しようとするならば、喫茶店での「笑顔がかわいい」や葬儀社の「誠実みのある人」や、ジョブズの画期的な新商品をつくる場合の「ものすごく頭が良いんだが、他社ではトラブルの種になるような連中」のように、まず明確な“目標”があって“選ばれる人達”が規定されるということです。

「事業の定義は“目標”に具体化しなければならない。そのままでは、いかによくできた定義であっても、優れた洞察、よき意図、よき警告にすぎない」。これがドラッガーの指摘です。また寄り道ですが、成功の大前提は、いくら卓抜なアイディアがあっても「具体的に目標が設定されなければ」実行できないのです。

もし業績が振るわないとしたら、高い業績をもたらせる“目標”が欠如しているか、あったしてもその目標を達成させる“人材”を誤認し、“選ぶべき人達”を獲得できていないことが原因かもしれません。まずは貢献する目標や高みである目標が必要で、そうでないのであれば高業績おろか普通の業績も望むべきではありません。

ジョブズの場合は、自身の目標を「われわれは宇宙に衝撃を与える」で、松下幸之助さんは「物資を無尽蔵にたらしめ、無代に等しい価格で提供する。人生に幸福をもたらし、この世に極楽楽土を建設する」とします。企業が存続・安定させるには、明確な訴える“目標”が基本的な第一歩で、第ニ歩は「可能にする人材」をいかに獲得するかということです。

それが意外と理解されておらず、業績を低迷させている企業が多く見受けられ、基礎要件が分からないのでは土俵にすら上がれません。もとよりこの要件を整えるのは、経営者が死命をかけた当然の行為であるのですが、ここのところの基礎をしっかり構築しさえすれば、これが起点となり企業の姿を大きく変転させることになりそうです。

 

print
いま読まれてます

  • なぜジョブズや盛田昭夫は「学歴」を無視したのか?人材見極めのコツとは
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け