定保 「そういうDNAが脈々と受け継がれているなと思ったのは、東日本大震災の時のスタッフの対応でした。震災発生後、交通機関が麻痺し、帰宅困難となった約2,000名の方々が帝国ホテルのロビーに避難してこられたんです。
当時私は総支配人でしたから、すぐに危機対応の現場指揮所を立ち上げ、現場を指揮する体制を整えました。
しかし、驚いたことに上からの指示がなくとも、現場のスタッフたちが率先してロビーに椅子や毛布を出したり、備蓄用の飲料水や乾パン、携帯電話の充電器を用意したりしたんです。
調理のスタッフたちは避難者の身体を少しでも温めることができればと考えて、震災の翌朝、避難者全員に野菜スープを振る舞いました」
──「さすが帝国ホテル」を象徴するような感動的なお話です。
定保 「震災直後はタクシーを待つお客様で本館の周りに長蛇の列ができていましたが、そこにお腹の大きな妊娠中の女性がいて、あるスタッフがサポートしてあげたのでしょう。
その女性から、『おかげさまで無事に生まれ、5歳になりました』というお手紙をもらった時には涙が出ましたね。
丸10年経った今年の3月にも、『あの時はお世話になりました』というお手紙をたくさんいただきました。そういうお客様の存在は本当にありがたい限りです。
(本記事は『致知』2021年8月号「積み重ね 積み重ねてもまた積み重ね」より一部抜粋したものです)
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