日本がエネルギー危機に?「中東リシャッフル」の兆し拡大で大混乱の恐れ

 

サドル師は反イランとされているため、彼の反米の立場は認識しつつ、何とか反イランで連携できないか、バイデン政権は模索しつつ、彼の反イラン度合いを見極める方針を取るようです。

サドル師が、噂通りに反イランを貫き、アメリカとの関係構築を拒まないのであれば、アメリカにとってはイランとイスラエルの間に大きな緩衝地帯を作ることが出来るため、アメリカによる直接的なコミットメント度合いを減らすことが出来ると判断することになるでしょう。

逆に同じシーア派ということで、イランから懐柔された場合には、スンニ派への支援を強化するか、もしくは、“イランと組んだ敵国”というレッテルを貼って、制裁措置に出ることもあるでしょう。

しかし、後者の場合、実際に困るのはイスラエルです。アフガニスタンの例でも分かるように、アメリカがイラクから命からがら逃げるような形で撤退させられた場合、アメリカによってイラク治安部隊に供与された近代兵器が新政権下の軍に奪われ、その矛先がイスラエルに向けられるかもしれません。

特に、政権の樹立のために、サドル師がスンニ派勢力も取り込むような形式を選択した場合、フセイン政権下でトレーニングされた精鋭の空軍パイロットの復権も考えられ、場合によってはイスラエルや周辺国に牙をむくかもしれません。

イスラエルは、すでに最悪のシナリオを立てて戦略を練り、臨戦態勢に入る準備を整えているようです。外交的には、サドル師にコンタクトを取り、関係構築を模索しているようですし、軍事的には不意の攻撃に備える姿勢を取り、また即応的に報復攻撃をできるように準備もしているとのことです。どのような状況が生まれるか、まだ不透明ではありますが、どちらに転んだとしても、イラク発の大きな中東リシャッフルが起きるかもしれません。

そして、イラクの今後に戦々恐々としているのは、サウジアラビア王国も同じのようです。サウジアラビア王国といえば、まさにスンニ派勢力の雄とされ、これまでに反イラン(反シーア派)の急先鋒として、アラビア半島のスンニ派諸国をまとめる立場にあります。ゆえに、これまでにもイラクにおけるシーア派の復権と、影に潜むイランの影響力拡大をとても警戒しています。

幸いサドル師は反イランと言われていることもあり、現時点では表立ったコメントや反応はありませんが、こちらもアメリカやイスラエル同様、サドル師が実質的に権力を握ると思われるイラクの動向を注視しているようです。とはいえ、サドル師はシーア派のリーダーであるため、反イランで強調できても、連携するようなシナリオは考えづらいですが、代わりにケンカを吹っ掛けるようなこともないかと思われます。

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