淘汰されつつあるニットアパレル。まだ「復活の道筋」はあるのか?

 

3.クラウドファンディングの活用

購入型のクラウドファンディングは、商品開発のコンセプトやプロセスを公開し、リターンとして開発商品を設定すれば、予約を受け付けてから、商品を生産し、販売することが可能である。しかし、問題はニッターがクラウドファンディングのプロジェクトに乗りたいと思うかだ。企画そのものに夢や可能性がなければ、意味がない。私なら、以下のような企画でニッターを口説きたいと思う。

第1に、これまでのアパレル企業のビジネスモデルでは、原価率が低すぎる。もっと原価率を高く設定して、品質の良い商品を顧客に届けたい。例えば、原価率40%に設定。

第2に、ニッターの情報を公開する。アパレル企業はブランド訴求を優先するために、ニッターの情報を公開しない。ニッターの情報を公開すれば、ニッターにとって更なる販売先の開拓につながるかもしれない。今回は生産者の顔の見える商品にしましょう。

第3に、利益配分を明確に設定する。これまでは卸と小売が儲けすぎていて、生産現場に還元できなかった。そこで、実験的に利益配分を再設定したい。たとえば、原価率40%にして、この中に糸代、加工賃、ニッターの利益を含める。ニットデザイナーに10%、WEBコンテンツに10%、プロジェクト管理に10%、小売店に30%と配分する。クラウドファンディングの場合、小売店経費はクラウドファンディング会社の手数料に相当する。もちろん、これはスタート時の設定であり、生産数量が増え、売上が増えてくれば変動していくだろう。また、広告宣伝等の経費も必要になるはずだ。

ここまでは商品以前の話。これに加えて、独自のブランドコンセプトや世界観、商品コンセプト、顧客ターゲット設定でブランドについて説明し、次に具体的な商品企画の説明を行う。ビジネスの条件をガラス張りにして、ブランド、商品の考え方を共有する。ここまで行えば、これに賛同してくれるニッターとチームを組めばいいということになる。

このプロジェクトの目的は、利益を上げることではない。継続的な事業を行うために、互いの利益を確保するということである。事業が継続すれば、結果的に利益を確保できるはずである。

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