ブーム再来。世界的なアナログ・レコード人気で懸念される「3つの問題点」

 

そんなわけで、人気化しているアナログ・レコードですが、問題がないわけではありません。大きく3つの問題があると思います。

1つは、デジタルと違って、ケアが必要だということです。まず、レコードは針を落として「物理的にこすって」音を拾います。ですから、レコードにホコリやゴミがついていると「プチッ」というノイズになります。ですから、再生の直前には盤面を掃除してやる必要があるし、再生が終わったらもう一度掃除をしてから袋にしまうなど、神経を使います。

また、レコードに落とす針も「接触してこすれる」ものですから、いくら人工的に作ったサファイヤとかダイヤなどの硬い素材でできていても磨耗します。仮に磨耗した針で再生すると、レコードの音を刻んだ溝が傷んでしまうのです。ですから、定期的に針を交換する必要があります。

一番大事なのは、再生中にプレーヤを揺らさないということです。再生中に振動を与えると、針が飛んで音楽が別の場所に行ってしまいます。そればかりか、硬い針が盤面をイレギュラーに動くことで、レコードに傷を作ってしまうのです。最悪なのは、中心から外側に向けて深い傷を作った場合で、その傷のところで音の溝にショートカットができてしまって、同じところをグルグル再生したり、そうはならなくても、レコードが一周するたびに定期的に「プチプチ」とノイズが入るようになるのです。では、盤面の円周に並行な傷なら良いかというと、それもダメで、音が直前や直後に飛んだりします。

とにかく、音楽の情報がファイルとして確定しており、それをCPUのクロックに従って整然と出力するだけのデジタルと違って、アナログレコードの場合は、本当に「リアルなモノ」が接触して「こすれた際の揺れ」を拡大して音楽として再生するということをやっているわけで、その接触面を傷つけないように、またきれいにしておくことには、大変な神経を使うわけです。

2つ目の問題は、いくらアナログ・レコードが「音が良い」からといっても、実は、「音の悪い暗黒時代」があるということです。この「暗黒時代」というのは、1980年前後から始まって2002年か2004年ごろまでの約25年間のデジタル録音の音源です。

その前は、レコードを作る際には、アナログのテープレコーダーを回して録音を行い、それを編集して作ったマスターから、溝を刻んでレコードを作っていました。実は、このアナログのマスターというのは、1秒間に38センチ(または76センチ)という高速で回る磁気テープであり、チャンネル数は2(2トラック)で、しかもテープの幅も広く、多くの情報量が記録できるものだったのです。

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