ブーム再来。世界的なアナログ・レコード人気で懸念される「3つの問題点」

 

ですが、先ほどの「ソニーとカラヤンの談合」の結果、1982年に発売されたCDでは、なんと「16ビット・44.1khz」という低スペックになってしまいました。本当に惜しい話で、とにかくサンプリング周波数は44.1で良いから、量子化は24ビットにしていれば、こんな問題は起きなかったのです。

恐ろしいことに、82年から2002年ごろまでは、最終的なデジタルマスターも、16ビットのままであり、この期間の録音は16ビットでしか残っていません。ということは、この時期の録音を今からアナログ・レコードにする場合には、結果的にCD以上の音質にはならず、反対にどうしても何らかのノイズが乗るということになってしまうのです。

仮に音の良さを求めてレコードにするのであれば、この時期のものは避けるべきと思います。また、それ以前のもので、本当のオリジナルは2トラック38とか76の高品質のものがあっても、それが散逸していて「今残っているマスターは16ビットのCDに焼くためのデジタルマスター」ということがあります。そうなると、音はやはりCDかそれ以下になってしまうのです。

反対に、2002年前後以降の録音で、デジタルマスターが24ビットとか、DSDであれば、そこからレコードのマスターを刻んだ場合には、CD以上の音質が期待できると思います(再生環境の良い場合)。

3つ目の問題は、レコードの大きさと重さです。アナログ時代に自分の好きな音楽を集めるというのは、PCやスマホにプレイリストを作るのではなく、本当にレコードという「モノ」を集める必要がありました。このレコードですが、大きさもさることながら、重さが問題です。

レコードの場合は、ディスクに加えてジャケットもあるので、大体1枚200グラムぐらいになります。1枚なら良いのですが、5枚でもう1キロ、50枚で10キロ、100枚で20キロということになります。アルバム100枚で20キロというのは大変で、当時のレコード収集家の間では「家の床が抜けるかも」という話が真剣に語られていました。

現在のレコードブームは、あくまで「シャレ」というか「オシャレ」という意味合いだけであり、基本的に自分のコレクションはプレイリストにあって、それに加えて、せいぜいが数十枚のレコードを集めるだけと思います。でしたら、心配はないのですが、仮に真剣に「コレクション」を始める場合には、その重さ対策は要注意と思います。

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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