露呈した“極右”の正体。安倍元首相と維新が煽る「ゴリ押し改憲」の横暴

 

安倍氏の政治活動を支え続けている「日本会議」など“生長の家原理主義”と呼ばれる人々も、このチャンスに色めき立っている。

安倍首相のもとの改憲には反対と唱えていた野党をかわすには、ハト派イメージの強い岸田首相の手で進めるほうが好都合かもしれないのだ。

改憲案を発議し、国民投票に持ち込むことができれば、自民党のペースだ。資金力にモノを言わせて、国民を洗脳するCMを垂れ流し続けるに違いない。

自民党は改正の条文イメージとして、自衛隊の明記、緊急事態対応など4項目を提示している。もし自衛隊が憲法に明記されたら、自衛隊に強い権限が与えられ、憲法に記されていない防衛省などの統制が効かなくなるおそれがある。

緊急事態条項は、戦争や大災害などが起こり、政府が平常の統治では対応できないと判断した場合、憲法を一時停止し、総理大臣に権力を集中させたり、人権を制限するなどの非常措置をとることができる権限を定めるものだ。明治憲法では、天皇の「緊急勅令」、「非常大権」のほか、行政権・司法権を軍部に移行する「戒厳」などの緊急事態条項が盛り込まれていた。それらが濫用されたことにより、国家が破滅への道に転げ落ちたのだ。

それにしても、不思議で仕方がない。岸田氏の派閥「宏池会」はハト派の伝統があり、岸田氏自身も憲法改正に積極的なイメージはなかった。宏池会前会長、古賀誠氏も「改憲実現に前のめりになるのは、本来の宏池会の理念から大きく外れている」と釘を刺している。

そもそも憲法改正が自民党の「党是」というのも、あやしい。結党時の「政綱」には「平和主義、民主主義、基本的人権尊重の原則を堅持しつつ、現行憲法の自主的改正をはかり」とある。しかし、最上位文書である「綱領」に「憲法改正」の文字はない。

昭和39年3月5日の参議院予算委員会で、憲法改正は立党の精神なのかと問われた池田勇人首相は「わが党の憲法に対する態度は、本年の大会で確認したとおり、憲法調査会の報告を待ち国民とともに考えていくということです」と答えるにとどまり、立党の精神とは認めなかった。

歴代首相は「憲法改正」を封印し、平和、自由、民主の観点から現行憲法を賛美する傾向が強かった。

たとえば、田中角栄首相の所信表明演説(1972年10月28日)。

「わが国は、平和憲法のもとに、一貫して平和国家としてのあり方を堅持し、国際社会との協調融和のなかで、発展の道を求めてまいりました」

タカ派の中曽根康弘首相でさえ施政方針演説(83年1月24日)でこう述べた。

「わが国の戦後の発展は、何よりも新憲法のもたらした民主主義と自由主義によって、日本国民の自由闊達な進取の個性が開放され、経済社会のあらゆる面に発揮されたことによるものであります」

国会の議事録を見る限り、憲法改正が自民党の「党是」と明言した総理大臣は小泉純一郎氏が最初であり、その小泉氏とて改憲に熱心だったとはいえない。

つまるところ、「党是」だから実行すると主張した総理大臣は安倍晋三氏が唯一の人である。

安倍氏はさきの自民党総裁選において、決選投票で岸田支持に回ったが、その条件として憲法改正の推進を突きつけていたのではないだろうか。岸田首相としても、宏池会のリベラル路線を嫌う党内保守派をなだめすかして政権を安定させるためには、改憲ポーズをとるに限ると思っているかもしれない。

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