2.天皇の子孫ながら仏教を広める
聖徳太子は、用明天皇の第二皇子で、母は欽明天皇の皇女・穴穂部間人皇女ですから、天皇家の直系中の直系です。つまり、神社神道を守る立場にあるお方。
普通なら、自分たちの存在意義を危うくする異国の異教を信じる人たちを弾圧するのが、古今東西の常識でしょう。ところが、「南無仏」と2歳で唱えた?聖徳太子は、仏教の擁護者となるのです。
もしも聖徳太子がいなかったら、神さまと仏さまという異なる宗教を自然に受け入れ神仏習合で拝む日本人のこころは育まれなかったかもしれません。
今、世界のニュースを見ると、宗教に基づく排他的な分断が進み、そこかしこで憎しみと争いを続いていて悲しくなります。そんないさかいを横目に、宗教に寛容な日本に生まれてよかったとつくづく思うのですが、これも聖徳太子のおかげではと、あらためて感じたのです。
3.17条憲法曰く「和をもって貴し」「独断せず議論せよ」
教科書でも習ったのに忘れていた17条憲法。聖徳太子が本当に作ったのかどうかは歴史学者の議論に任せ、その中身に注目しましょう。
詳しくは以下のwikipediaを読んで欲しいのですが、ひとことで言えば「人々の多様性を認め、独断や専横を戒め、みんなで議論して、和すること」を勧めています。
● 十七条憲法(wikipedia)
現代においてさえ、世界のどの国でも実現できていない寛容で平和な教えを、今から1,400年以上前に提唱しているのですから驚きです。
わが師、日下公人先生が憲法改正の議論になった時に「聖徳太子の17条憲法に学べ」と発言したことを、今回の展示を見て思い出しました。
もちろん、半ば伝説と化していることも多い聖徳太子ですが、仏教の大衆化を果たした親鸞聖人が、聖徳太子を日本のお釈迦様と仰いでいたことを見ても、その遺徳は絶大だったのでしょう。17条憲法にしても、天皇家直系で臨めばわがまま放題できた人が起草したと考えると、その凄さがわかるのです。
サントリー美術館の展覧会をきっかけに、山岸涼子の名作マンガを読み返しだり、大阪四天王寺にお参りしたくなりました。そして、聖徳太子がどんなことを考えていたのか、タイムマシンに乗って、直に聴きに行きたいとさえ思ったのです。
#サントリー美術館 #聖徳太子 #日出づる処の天子
● サントリー美術館 開館60周年記念展 千四百年御聖忌記念特別展 「聖徳太子 日出づる処の天子」
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image by: Japanese Painting Anthlogy, ed.et publ. by SINBI-SHOIN, TOKYO, 1941 / public domain