ヤフコメごときに踊らされる日本。「コロナ鎖国」が母国を滅びへと導く

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先日掲載の「オミクロン株の出現で『コロナ鎖国』が“できてしまう”日本の深刻度」で、事実上の国境封鎖が可能となってしまっている我が国の状況が、どれだけ深刻かを解説した米国在住作家の冷泉彰彦さんですが、2年にも及ぶ「鎖国」の悪影響は、我々日本人が思ってる以上に多岐に渡ってしまっているようです。今回冷泉さんは自身のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』で、5つのマイナス要因を挙げそれぞれについて詳しく解説。さらに低下する一方の国内の生産性を上げるため、「国境が開いた際」に日本全体で実践すべきことを提示しています。

【関連】オミクロン株の出現で「コロナ鎖国」が“できてしまう”日本の深刻度

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2021年12月21日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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事実上の国境閉鎖、コロナ後への備えをどうする?

新型コロナウィルスのオミクロン株発生の報を受けて、岸田政権は「水際対策」を徹底することとしています。具体的には、外国人の入国は原則的に全面禁止となる一方で、多くの国と地域からの入国者は、邦人であっても3日から9日のホテル等への強制隔離を含む14日間の自主隔離が義務付けられています。

タイミングとしては、12月初旬から日本の国境が突然に「事実上閉鎖」されたわけです。その背景には、国内の一部の世論が「島国の特質を生かした水際作戦」を強く要求してきたことがあるようです。ちなみに、この世論は「ヤフー日本のコメント欄」という特殊なメディアが主たる活動の場所になっています。

この「ヤフコメ」の問題点については、どこかで議論したいと思っていますが、とにかく岸田政権は前政権、つまり安倍政権と菅政権の教訓を踏まえて、政権浮揚のために迅速な対応に走ったのでした。もっと言えば「ヤフコメ」を重視していたと考えられます。

この点に関して言えば、「たかがヤフコメ」に踊らされているという批判は可能ですが、その結果として「もう少しマシ」な世論調査をかけると、こうした「水際作戦」については92%というような支持が出ています。更に言えばその結果として政権支持率が何と60%台にアップしているので、政権としては、「引くに引けない」格好になっています。

そうとは言え、オミクロン株が、強力な伝染性と共に強毒性を有していた可能性は全時点では否定できません。英国から「死者は1名だけ」という報道がされていた時期には、一部には、「オミクロンは感染力は強いが、弱毒性のため、デルタを駆逐してコロナをただの風邪にしてくれる救世主」という期待感があったのは事実です。

ですが、その後、英国では7名、さらに最新の報道では累計12名の死者が確認されていることから、この種の「超楽観論」はややトーンダウンしています。それはともかく、日本の場合は「ほとんどデルタを制圧」した中で、徹底した「水際作戦」でオミクロンに関する「時間稼ぎ」をしているわけで、この方針を現時点で否定することはできません。

ただ、方法論としては「14日は厳格なホテル隔離を個人の費用負担で(シンガポール方式)」とした上で、国籍に関わらずビザのある人(留学生、婚約者、駐在員、長期出張者)は入れるというスタイルが望ましいと思います。これなら、「ヤフコメ」の面々にも科学的かつ受益者負担ということで納得してもらえるのではないでしょうか。

勿論、この方式に関しては法改正が必要なために、政権は消極的だったのですが、事態がここまで至った中では、法律を変えてでも取り組むべきと思います。

現在の状況ですが、入国に関しては、以下の数点の指摘をしておきたいと思います。

・ニューヨーク州とハワイ州の6日隔離について、どうしてこの2州に関して厳しいのかが不明確です。印象論としては、ニューヨークに滞在している在外邦人に対しては「大変だから戻ってくるな」というメッセージ、反対にハワイに関しては日本在住者について「年末年始のハワイ旅行は断念せよ」というメッセージとしてやっている、そんな風に見えます。仮にそうだとしたら、日本の国益を代表してNYで頑張っている邦人、日本人の受け入れに頑張ってきたハワイの観光産業に対して、やはり理不尽という感覚は拭えません。

・書類チェック(これは電子化の途上ですが)後の「PCR結果待ち」という名の「ホテルと移動手段の振り分け待ち」の5時間とか6時間という待機について、乳幼児などを連れた親子が「全く優先されない」という指摘が出ています。事実であれば、非常に恥ずかしいことだと思います。子供を優先すると、子供のない人が「キレた」場合に担当者のメンタル負荷がキツイというのは理解できますが、そんな悲しい認識をサクッと上書きするようなマネジメントを求めたいと思います。

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