ヤフコメごときに踊らされる日本。「コロナ鎖国」が母国を滅びへと導く

 

2点目は、日本のカルチャーについて、ガラパゴス化が進んでいるということです。これも人に行き来が止まっていることの影響だと思います。例えば、「石炭火力発電は、仮にニュータイプであっても世界の基準としては悪玉イメージが決定的」「大坂なおみ選手の<弱さの告白>は世界を感動させ、多くの人を動かした」というような2つの問題をとっても、日本ではほとんど知られていません。むしろ反対の印象論が広がっている気配すらあります。

ただ、ポストコロナになった場合には、日本人は変わり身が早いので、例えば観光業の再起動に関しては心配していません。明治維新では尊王攘夷のテロリストが開国と通商にコロッと変身したし、戦後は軍国主義者が一夜にして民主主義とか共産主義を掲げるようになりました。70年代には学生運動に猛進した理想主義者が、エコノミックアニマルに変身したという具合です。(失礼)

ですから当面の問題はそんなに起きないとは思います。ですが、日本国内にはアジアや欧米の経済とテックとカルチャーの「うねり」に関して、この2年間、実感のある情報が遮断されていた、その弊害というのは今後ジワジワと出てくるのではないかと思われます。

ちなみに、海外では、この2年間は「空前の日本ブーム」がさらに加速しているので、日本に対する悪印象はほとんどありません。ですから大丈夫だとは思いますが、ヘタをするとカルチャーギャップが悲劇を生む可能性は増しているわけで、ポストコロナには警戒が必要です。

3番目の問題は、留学生です。どうして日本政府が「留学生は日本人と同一の学費」つまり、多額の助成金をつけてまで留学生を大量に入れてきたのかというと、理由は簡単です。少子化で大学生の年齢の人口が半減したからです。

例えばですが、非常に大雑把な計算をすると、東大の定員は1学年3,000人で据え置きです。団塊ジュニアの時代に、大学進学率50%で計算すると受験生は、1年に100万人です。ということは、(医学部、アイビーを無視した数字ですが)東大は上位0.3%の人材を集めることが出ていたわけです。

これが母数が50万に減った中では(ちなみに今年の出生数は78万という衝撃の予測もありますが)同じように3,000人を取っていると、これは上位0.6%になります。乱暴に単純化した話で恐縮ですが、同じような「偏差値の低下」は全ての大学学部で起きているわけです。

そこを底上げするために留学生は必要というわけです。とにかく勉強熱心で、議論にちゃんと参加する留学生を入れることで、辛うじて学生集団の質と量を確保してきたのです。

にも関わらず、留学生に対して「一旦帰省したら入国禁止」というのは、差別どころではない暴力的な措置です。「14日の強制隔離」を大学でやらせれば、可能であるわけで、とにかく措置をしながら入れる、入る際は大変でも、留学生ですから数年は日本国内に在住するわけで、「出たり入ったりは制限」することはできると思います。

何が良くないのかというと、今回の「留学生の再入国禁止」措置によって、日本は「イザというときは2年も鎖国するリスクのある国」ということになり、益々優秀な人材に見放されるという可能性です。これは真剣に考えたほうがいいと思います。

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