サントリー「天然水」を清涼飲料No.1ブランドに押し上げた“外様社長”の意識改革

 

ローソンから来た外様社長~新浪流「やってみなはれ」とは?

「ローソン」での実績が買われ、サントリーに呼ばれた新浪。経営のよりどころにしたのは「やってみなはれ」の言葉だった。

「やらないで、ああだこうだと考えていないで、『まずはやりなさい』と。そして裏背景には『やり切れよ』と」(新浪)

新浪は「やってみなはれ」の精神を現場により浸透させようと「やってみなはれ大賞」という表彰制度を新設。「新しいチャレンジをどんどんやってみろ」とハッパを掛けた。

新浪流「やってみなはれ」1・常識を覆す商品

2017年に業界初のペットボトルコーヒー「クラフトボス」を発売。「コーヒー飲料といえば缶」という常識を覆した。水筒代わりに買うオフィスワーカーが続出し、新たなヒットを生んだ。その後、ライバルもペットボトルのコーヒーを発売。サントリーは新市場を切り開いた。

新浪流「やってみなはれ」2・テコ入れも大胆に

2004年に発売した緑茶の「伊右衛門」。滑り出しこそ伊藤園の「おーいお茶」に次ぐ2位と好調だったが、その後、コカ・コーラ社の「綾鷹」などの競合商品が増えると売り上げはジリジリ減少。発売の翌年をピークに、2019年には6割まで落ち込んだ。

「このままいくと棚から落ちてしまう。店頭からなくなってしまう。かなり崖っぷちでした」(伊右衛門チームデザイン担当・西川圭)

そこで大胆なリニューアルにうって出る。実は、ペットボトルの緑茶は各メーカーとも茶色。「鮮やかな緑なら差別化できる」と、緑色で味にもこだわったお茶の開発が始まった。

「お茶らしい味わいのためにはカテキンが重要ですが、色が茶色になる。どうクリアするか苦労しました。試作は300回を超えました」(伊右衛門チーム中味開発担当・上本倉平)

およそ1年に渡って試行錯誤を続け、他社の緑茶とは一線を画す鮮やかな緑色のお茶が完成。その色がより見えるようラベルの面積を小さくした新しい「伊右衛門」。去年4月に発売すると、コロナ禍でライバルが軒並み落ち込む中、唯一、販売量を増やした。

この伊右衛門チームは昨年度の「やってみなはれ大賞」を獲得した。

「『やってみなはれ大賞』があることで僕らの思いがしっかり評価される。より良いものをつくろうというやる気が上がります」(上本)

新浪流「やってみなはれ」3・後追いでもOK

今年4月に発売した新商品「パーフェクトサントリービール」の最大の特徴は、“糖質ゼロ”にしたこと。ただ、“糖質ゼロ”のビールはすでに去年、キリンが発売しており、サントリーは後追いする形となった。

「“糖質ゼロ”にする技術はそう難しくはなかったが、おいしくすることとかけ合わせるのに時間がかかった。キリンさんのビールもおいしいと思います。でも私たちには私たちのおいしい味がある」(新浪)

新浪の号令を受けて、商品責任者が巻き返しに打って出た。

東京・北区のコモディイイダ滝野川店の店頭では、マーケティング本部・稲垣梨沙が客に、新商品は「プレミアムモルツ」と同じ麦芽を使い、手間をかけて造っていることを説明していた。オリジナリティをきっちり伝えると、客は買っていく。

「キリンさんに先を越されたとしても、お客さまにとって価値ある商品だと信じていますので、サントリーとして社運を懸けて、諦めず、へこたれず、しつこくやり抜いてきたいと思います」(稲垣)

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