懐メロならぬ“懐フク”。ファション業界のデジタル化によるビジネスの可能性

 

3.顧客がコレクションを作る 

ファッションとは常に変化を続けるものだ。従って、昔の服をテーマにして新しいコレクションを作ることもできる。

私が言いたいのはそういうことではなく、膨大な過去のアーカイブを丸ごと保存して、それを活用できないだろうか、ということだ。パターンCADデータをデータベースに保存しておけば、いつでも使えるし、そのデータを工場に送信することもできる。

アナログな時代では、昔の服のデータを保存しておくのは困難だったが、デジタルな時代ならば容易である。

デザイナーやアパレル企業がコレクションを作る。それをデジタルデータとして保存し、いつでも復刻できるようにすれば、毎年コレクションは増え続ける。

その中で気に入ったデザインがあれば、それを一生着続けることも可能である。常に新しいファッションを追いかけるのも楽しいが、自分のスタイルが決まってくれば、同じ服を一生着続けるというニーズも生れてくるのではないか。

メンズなら、シャツとパンツジャケットを一型ずつ保存しておけば、生地の乗せ換えだけで迷う必要はない。

これは婦人服でも同様である。ジャケットスカート、シャツとパンツ、ワンピースを基本としてジャケットを組み合わせてもいい。女性は男性よりも変化を好むだろうが、それでも、自分自身の制服を作ってそれを着続けるという発想もできるだろう。

この場合、生地が重要である。例えば、テキスタイルメーカーと組んで、顧客にシーズン毎に新しいコレクションを選ばせることもできるだろう。新しい生地、あるいは定番の生地で新型の服を作ってもいいし、継続している型のパターンの服を作ってもいい。

デザイナーは新型を提案し、テキスタイルメーカーは新しい生地を提案する。それを組み合わせるのは顧客でもいいだろう。そうなれば、コレクションを作るのは顧客ということになる。

あるいは、スタイリストのような人が、お客様と会話しながら、パターンと生地の組合せを決めていくのも良いかもしれない。

こうなると、ファッションビジネスの流通もビジネスモデルも一新される。縫製工場とパターン、テキスタイルメーカーが顧客と対峙して新しいコレクションをつくり出す。個々の顧客が自分のブランドを持つという発想である。

■編集後記「締めの都々逸」

「古い奴だと 思われたけど 毎年買ってる同じ服」

サスティナブルって何でしょう。ファッションが持つ根本的な特徴は変化を続けるということです。しかし、一度発表した服の販売を1シーズンで終了する必要はないのではないか。勿論、定番と呼ばれる服は何年も継続します。バーバリーのトレンチコートのように。

これを最初から仕組みとして取り入れられないか。シーズン毎に新しい服を作り足していくという発想。コレクションは毎年増え続けるという発想です。

デジタル化によって、こんなビジネスも可能になりました。どこかやらないかなぁ。(坂口昌章)

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image by: Shutterstock.com

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