懐メロならぬ“懐フク”。ファション業界のデジタル化によるビジネスの可能性

 

2.懐フクの特徴とは?

今の服と、昔の服との違いは何だろう。第一に、昔の服は重かった。特に、メンズの服は重かった。重いということは、打ち込みが良い良質の生地が多かったということでもある。

ジャケットが軽くなったのは、イタリアブームの影響が強い。それまでは英国風のしっかりとしたスーツが好まれたが、イタリアでは風に裾がなびくようなジャケットが良いとされた。

しかし、イタリアのジャケットの軽さは、良質で細いウール糸の軽さであり、現在のような打ち込みが甘いペラペラな軽さとは異なる。

これはシャツにもパンツにも通じる。昔の紳士服地は重く厚くしっかりとしていた。紳士服地と婦人服地は明らかに異なっていたのだ。しかし、これも80年代頃から婦人服地のような軽い生地のメンズウェアが市場に出るようになった。

第二に、昔の服はゆとりが多く着やすかった。今の服は、身体にフィットしている方がカッコイイと評価されるようだ。

数年前から、欧州ではビッグシルエットが主流になりつつあるが、日本ではあまり見られない。

これは、価格志向が強いために、ビッグシルエットが流行しても、用尺が掛かるシルエットは価格が上がるために敬遠されていることもあるだろう。

そもそも、日本の夏は高温多湿であり、密閉型の洋服は湿気がこもって不快である。日本のきものは開放型の構造で湿気を逃がす構造になっている。日本に洋服が入ってきた時も、ボタンを首まで止めるのは息苦しく感じたに違いないし、また、あまりにもタイトなシルエットは動きづらいと感じただろう。

ゆとりの多い洋服は、ある意味で和洋折衷なのである。

第三に、昔の服はスタンダードなデザインが主流だった。というより、きものは形の変化がないので、洋服に対しても、形の変化より色柄の変化を好んだ。ベーシックな形に色柄の変化、というのが基本だった。

これは、婦人服に顕著だった。プリントのブラウスやワンピースの人気が高かった。また、シルクのように薄くしなやかなレーヨン、ポリエステル生地も、きものになれていた日本人には馴染みやすいものだった。

これも懐フクニーズと言えるだろう。

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