ここにもプーチンと習近平の影。カザフスタン暴動の勝者と敗者

 

「外国勢力」とは?

トカエフさんもプーチンも、デモは「外国勢力によるもの」としています。ところが、「外国勢力」とは「具体的に誰なのか?」について、見解が分かれているのです。トカエフさんは、中央アジア、中東、アフガンの「武装勢力」としています。「AFP=時事」1月11日。

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ(Kassym-Jomart Tokayev)大統領は10日、同国で先週発生した歴史的騒乱について、中央アジアとアフガニスタン、中東の武装勢力によるものだと主張した。同国大統領府が明らかにした。

これは、何でしょうか?

カザフはイスラム教の国。しかし、「無神論国家」ソ連の一部だったため、イスラムは「世俗化」されています。つまり、「ゆるい」。たとえばイスラム原理主義者でアフガンの支配者タリバンからみると、カザフのイスラムは「裏切り者」に見えるかもしれません。

一方プーチンは?「朝日新聞DIGITAL」1月10日。

プーチン氏は「起きたのは値上げへの自然発生的な抗議ではない」と発言。親ロシア派政権が倒れ、プーチン氏が「欧米勢力の扇動を受けた『カラー革命』」と見なす2014年のウクライナの政変を引き合いに「同様の手法が使われた」とも語った。

 

CSTOはカザフの要請を受け、ロシア軍中心の「平和維持部隊」が現地で展開し始めた。プーチン氏は「部隊派遣は、我々はカラー革命を許さないという証しだ」と述べた。

「カラー革命」とは、一般的に

  • 2003年ジョージア
  • 2004年ウクライナ
  • 2005年キルギス

で起きた革命のことです。プーチンは、2014年のウクライナ革命も「カラー革命」に含めている。そして、プーチンは、これらの革命の背後にアメリカがいると確信しているのです。今回のカザフスタンの乱も、彼は「アメリカの仕業」と考えているのでしょうか?

実際は、「外国勢力」などいなかった可能性もあります。「外国勢力がいた」といわなければまずい状況がある。どういうことでしょうか?

今回CSTOは、「集団安全保障条約」に従って軍隊を派遣した。しかし、「国内に起きたデモを鎮圧するために」この条約を適用するのは、おかしなことです。

たとえばハロウィンの日に渋谷で暴動が起きたとしましょう。日本政府は、「日米安保を発動して米軍助けてください」となるでしょうか?

デモが「カザフスタン人だけ」だと、集団安全保障条約が適用されない。だから、「外国勢力から攻撃を受けたことにしよう」と。まあ、この辺は、もう少し時間が経たないと真相はわからないでしょう。

今回のことで何がわかるか。

プーチンは、「勢力圏を維持するためには、軍を使うことを躊躇しない」ということです。そして、今ロシアは、大軍をウクライナ国境近くに集結させている。現在、アメリカ、NATOとロシアの協議が続けられていますが。うまく話がまとまり、戦闘に発展しないことを願いましょう。

それは、「いいこと」だからというのもあります。そして、「アメリカは、ウクライナと台湾、二方面で戦うのが困難」という理由もある。つまり「欧州の平和維持は、日本の国益」なのです。

(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年1月12日号より一部抜粋)

image by: PromKaz / Shutterstock.com

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print
いま読まれてます

  • ここにもプーチンと習近平の影。カザフスタン暴動の勝者と敗者
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け