理解不能。無断で「高知小2水難事故グッズ」をECサイトで販売した人物の倫理観

 

情報開示よりも削除

いわゆる誹謗中傷やインターネット上の権利侵害などについての国の動きは、総務省のホームページに取り上げられているが、読み進めればわかるように「情報開示」についてはこれまでよりは少し積極的に受け取れる表現はあるものの、それよりは「削除」が強化されていく流れであることがわかる。

ところが、いわゆる誹謗中傷やインターネット上の権利侵害などは投稿する側は、キーボードを叩くだけであって指でできる極めて容易な手段であり、削除を求める側は、権利侵害などを明確に示し、プロバイダに当たる役務提供者(会社)に通報するなど、いずれにしても時間と手間をかけて手続きをする必要があるのだ。

つまり、こうした削除をやっても次から次へと削除すべき事例は発生し、いたちごっこになるわけだ。一方で、削除する側はそれなりにハードルがあって、その作業が追いつかなくなっていく。結果、被害側が泣き寝入る結果になったり、将来的な不利益を被ったり、酷く心を痛め自死に至るケースもあるわけである。

だからこそ、多くの被害者は削除よりも情報開示を求めるわけだ。情報開示により投稿者が特定されれば、裁判をすることなどもできるし直接の交渉も可能である。

安全な場所から人を傷つけていた匿名の投稿者は、自らの名前で投稿ができるほど度胸も肝も据わっていない卑怯者が大半だから、情報開示が容易にできることがわかれば、不用意に言葉をナイフにしようとはしないわけである。

ECサイトは全て代行していた

さて、前述の「高知県小学生水難事故」をプリントして金儲けをしていた人物が利用していたECサイトは、いわゆる特定電気通信役務提供者にあたるプロバイダ責任法の範疇にあることを提示しているが、このサイトを利用すると、「発送者」「販売者」はこのECサイト運営会社となり、代金収納も関連会社などで代行していることになっていた。

つまり、Tシャツなどのグッズを販売するAという個人が、グッズを販売する場合、利用するECサイトが事実上販売し、代金を回収してくれるわけだ。

一般にECサイトを個人であれ法人であれ運営する場合は、通信販売であることから、特定商取引法に基づき、販売についての基本的なことを示す必要がある。

私もヤフオクなどはよく利用するが、販売者はヤフオクではなく実際の出品者になっている。

しかし、今回のECサイトはいわゆるプロバイダと販売における責任者が同一であるが、事実上の販売者は個人の投稿者ということになるわけだ。

この仕組みを使えば、例えばあまり知られていない企業のロゴや商標のあるマークなどを勝手に販売してしまったとしても、おおよそ権利者や関係者から忠告を受けなければ、事前の検品ではじくことは難しいであろうし、仮にそうした責任問題が発生したとしても、事実上、情報開示を現状の仕組みで運用すれば、ECサイト会社の恣意的な判断で、裁判を起こさなければ、権利侵害者を特定することは不能になる。

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