もう後戻りは不可能。北京五輪の閉幕後さらに激化する「米中対立」の地獄絵図

2022.02.08
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先日掲載の「卑怯な中国。IOCまで使って台湾に北京五輪開閉会式の参加を強要した黒い思惑」でもお伝えしたとおり、その裏ではおおよそ「平和とスポーツの祭典」らしからぬ駆け引きが行われている北京冬季五輪ですが、今大会が米中間の緊張をさらに高めてしまう要因になりかねないようです。これまでも「習近平も顔面蒼白。トランプ以上に厳しい米バイデンの対中国『強硬』路線」等の記事で米中覇権争奪戦について多方面からの分析を試みてきた、外務省や国連機関とも繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏は今回、2022年の米中対立の行方を様々な要素を勘案しつつ考察。北京五輪における中国当局が犯しかねない「ルール違反」が、両国関係に影響を与える可能性を危惧しています。

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今年も米中対立は続く さらに激化する恐れも

バイデン政権が発足してからちょうど1年となるが、バイデン政権になっても中国への厳しい姿勢は続いた。バイデン政権の発足当初、一部にはバイデン政権になって米国の対中姿勢が軟化するのではないかとの指摘もあったが、同政権はトランプ政権同様に厳しい姿勢を貫いている。異なるところがあるとすれば、バイデン政権が新疆ウイグルの人権問題を前面に押し出す形で中国に迫り、昨年は人権デューデリジェンスへの意識が世界企業の間で拡がった。その影響で企業の中には輸出入制限や調達先変更など経済活動で大きな制限を受ける動きも多く見られた。

対中国で米国と他の欧米諸国が接近し、米国主導の対中有志連合なるものが表面化したことも大きな特徴だ。たとえば米国と英国、カナダやEUは昨年3月、中国が新疆ウイグル自治区でウイグル族に対するジェノサイドや人道に対する.罪を続けているとして関係当局者らに対する経済制裁を発動した。また、バイデン政権は自由で開かれたインド太平洋を実現すべく日本とオーストラリア、インドとの多国間協力クアッド(QUAD)の動きを加速化させ、英国とオーストラリアとは新たな安全保障協力枠組みオーカス(AUKUS)を創設するなど対中で各国との連携を強化した。さらに、昨年は英国やフランス、ドイツやオランダ、カナダなどの海軍が北東アジア海域にプレゼンスを示し、米軍や自衛隊と合同軍事演習などを実施するなど、欧州のインド太平洋へ関与する姿勢も鮮明になった。

一方、台湾情勢を巡っては、フランスやオーストラリア、リトアニアなど欧米諸国の政治家が相次いで台湾を訪問しては蔡英文政権と関係を緊密化させたことで、中国の不信感が高まっている。それによりいつか台湾有事が発生する恐れがあるとして、台湾有事における邦人保護という議論も国内で活発化するようになった。たとえば、自民党の高市早苗政調会長は12月19日、都内で開催された講演会の席で台湾有事に言及し、どのように邦人の保護や非戦闘員の退避を行うのか、日本と台湾で早く協議しておかないといけないとの見解を示した。また、年明けの7日に行われた日米外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)で米国のブリンケン国務長官は冒頭から中国を名指しで非難し、共同声明では中国による一方的な現状変更政策に対して日米がいまだかつてなく統合された形で対応することが表明された。

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