もう後戻りは不可能。北京五輪の閉幕後さらに激化する「米中対立」の地獄絵図

2022.02.08
 

バイデン政権が中国批判を強めざるを得ないウラ事情

今年も基本的には去年の延長となる。米中対立が続き、バイデン政権は独自に中国へ制裁などを強化する一方、同盟国や友好国との連携を強化していくことだろう。米中は地球温暖化では協力できる可能性も示唆しているが、バイデン大統領も習主席も台湾や香港、新疆ウイグルなど核心的な部分では全く歩み寄る姿勢は見せていない。

今後の米中関係の行方の占う上で大きなポイントになるのは北京五輪だ。既に米国と英国、オーストラリアとカナダ、リトアニアなどは閣僚などを開会式・閉会式に派遣しない外交的ボイコットを表明しているが、中国はそれを強く非難している。このような中、具体的に北京五輪に参加する米国や英国など欧米諸国の選手団からは自らへの影響を懸念する声も少なくない。たとえば、中国へ懸念を強めるオランダの地元メディアは1月中旬までに、同国オリンピック委員会が中国国内でのスパイ活動に強い懸念を抱き、北京五輪に参加するオランダ選手たちに自らが所有する携帯電話やノートパソコンを持ち込まないよう助言したという。オランダ選手たちは未使用の携帯などを用意するとも報道されている。外交的ボイコットを高々に宣言している国々の選手団もそれを警戒しているとみられ、今後は北京五輪最中における情報搾取などのスパイ活動を巡って問題が大きくなり、それが北京五輪後の米中対立に影響を与えることが考えられる。

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米中対立は既に後戻りできないところまで来ている。昨年12月、米国のシンクタンク「Ronald Reagan Presidential Foundation and Institute」が公表した世論調査によると、「米国にとって最も脅威となる国はどこか」とのアンケートに対し、ロシアが14パーセント、北朝鮮が12パーセントとなった一方、回答者の52パーセントが中国と回答した。

2018年に実施された同じ調査で中国を脅威と回答した割合が21パーセントだったことから、3年間で大幅に増加したことになる。要は、中国への警戒姿勢が共和党民主党を問わず米国議会のコンセンサスになっているなか、それを支える米国民の間でもそれが浸透してきているのだ。そうなれば、中国に厳しい姿勢を貫くこと自体が支持拡大に繋がることになり、支持率低下が続くバイデン政権はこれまで以上に中国批判を強める可能性がある。今年も予期せぬ出来事で米中対立が一気に高揚するだろうが、まずは北京五輪が試金石となる。

image by: Adam Yee / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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