邦人退避2万人、沖縄は戦場に。台湾有事で懸念される最悪シナリオ

2021.12.25
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先日掲載の「北京五輪の終了後が危ない。中国の台湾侵攻に備える米国、無防備な日本」等の記事でもお伝えしているとおり、北京冬季オリンピック閉幕後の「台湾有事」の可能性を指摘するアメリカ。その台湾には2万人とも言われる日本人が在留していますが、彼らの退避については現時点でどのような対策が講じられているのでしょうか。今回、外務省や国連機関とも繋がりを持ち国際政治を熟知するアッズーリ氏は、事が起こった際の邦人退避シナリオを検証。その上で平時から構築しておくべき対策を考察しています。

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緊迫化する台湾情勢 邦人は安全に退避できるのか

今年、米国ではバイデン政権が誕生した。バイデン政権で対中姿勢が和らぐのではとの見方もあったが、蓋を開ければ基本的にはトランプ政権を継承したものと言えよう。バイデン大統領は欧州やオーストラリアとの結束を強化し、集団安全保障的に中国に対応する構図を実現した。特に、英国の動きは顕著で、9月に誕生した米英豪による安全保障協力「オーカス(AUKUS)」のように、英中関係も激しく悪化している。米英豪などは北京五輪の外交的ボイコットを実施する見込みで、中国を取り巻く情勢は来年さらに厳しくなるだろう。

そのような中、来年も見据え、我々日本人が真剣に考えるべきことに台湾有事がある。台湾情勢を巡っては、今年、米国や欧州の議員団などが相次いで台湾を訪問しては蔡英文政権と結束を強化するなど、中国はますます懸念を強めている。中国軍機による台湾の防空識別圏への進入が11月に159機に上り、9月から3か月連続で100機を超え、おそらく来年はもっと緊張が走る可能性が高い。

今年、トランプ政権で国家安全保障担当補佐官を務めたマクマスター氏は、北京五輪後に台湾情勢がエスカレートする恐れがあるとし、インド太平洋軍で司令官を務めたデービットソン氏も、今後6年以内に中国が台湾に侵攻する恐れがあると指摘するなど、国防幹部たちから驚かせる発言が相次いだ。台湾国防部も中国の軍拡について懸念を繰り返し発表しているが、習政権は台湾を核心的利益と位置づけており、日に日に台湾への言及は厳しさを増している。中国にとって、台湾併合は法的に問題がない。中国政府は2005年3月、「平和的統一の可能性が完全に失われた場合、非平和的措置および他の必要な措置をとる」と明記する反国家分裂法を採択している。中国がいつ反国家分裂法に基づいて行動を起こしてくるかも考えておく必要がある。

では、台湾有事なった場合、邦人はどのように退避することが考えられるのか。まず、台湾有事といっても、中国が台湾へ上陸し、島を占拠するというシナリオは最終局面となろう。最初に中国が行うのは電磁波攻撃やサイバー攻撃などで、社会インフラを不安定化させることで台湾から譲歩を引きだろうとする。また、台北など人々の居住地区への攻撃は国際的非難を浴びることから避け、最初の軍事攻撃は台湾国防部や政府庁舎、または空港や湾岸など米軍の支援を無能化する戦略を取ることが予想される。

しかし、いずれのシナリオになるにせよ、有事となった場合の邦人退避は困難を極めることになる。当然ながら、台湾から日本への退避で陸路はあり得ず、必然的に海路か空路になる。そして、上述したように、中国は台湾の空港や湾岸施設を攻撃してくる可能性が高く、実際問題、邦人退避先は台湾から海路で110キロしか離れていない沖縄県・与那国島になる。西表島や石垣島など比較的に大きな島も考えられる。

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