コロナ鎖国の弊害で苦しむ日本。渋沢栄一の子孫が説く「新しい資本主義」実現崩壊の危険性

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新型コロナウイルスの変異株・オミクロン株の感染拡大を受け、日本が続けてきた水際対策。しかし、“コロナ鎖国”とも呼ばれるほど厳しいその措置は諸外国との人材交流に深刻な影響を与えているようです。渋沢栄一の子孫で、岸田内閣が設置した「新しい資本主義実現会議」のメンバーでもある渋澤健さんが、日本を目指す外国人たちの悲痛な叫びを紹介していきます。

プロフィール:渋澤 健(しぶさわ・けん)
国際関係の財団法人から米国でMBAを得て金融業界へ転身。外資系金融機関で日本国債や為替オプションのディーリング、株式デリバティブのセールズ業務に携わり、米大手ヘッジファンドの日本代表を務める。2001年に独立。2007年にコモンズ(株)を設立し、2008年にコモンズ投信会長に着任。日本の資本主義の父・渋沢栄一5代目子孫。

コロナ鎖国で自分の首を苦しめている日本

謹啓 ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。

前回のレターでは、若者たちが「純粋な気持ち」を発揮する環境を整えることが、日本企業の競争力や存在感へとつながるという課題をお示しいたしました。今回は、その続編です。

現在、「純粋な気持ち」を日本で発揮したいと希望を持つ数多くの若者たちが、抜け出せる見通しが立たないトンネルの暗闇の中で悶々とした思いを抱いています。コロナ禍の水際対策で入国が阻止されている外国人研究者・留学生たちです。

先月、YouTubeビデオで、日本入国の水際対策によって二度とない大事な2年間を入国できないまま途方に暮れた留学生の生の声を聴いて、改めてコロナ禍の世界における日本の立ち位置を危惧してしまいました。

面白おかしく編集してあるテイストについて、難色を示す反応はあるかもしれません。ただ、投稿者であるマレーシア人の彼女が発信している体験談はリアルです。日本国内に暮らす自分が知らなかったことに驚きを感じると同時に、日本に暮らしたいと思う外国人に対して門を閉ざしてきた自分の国のスタンスに、恥じ入りました。

さらに、ビデオの内容に加え、数多く寄せられているコメントにも衝撃を受けました。【注:以下は英文の翻訳】

・ちょっと変に聞こえるかもしれないけど、他の人も日本行きを諦めたのを見ると良い気分になる自分がいる。同じ判断を去年7月に下したけどその後は遥かにハッピーだよ。

・自分は1年以上、入国を待っている37万人の一人。あなたが言うように、我々は寄生虫ではない。達成したい目的があるから日本を選んだのだ。

・同じく。自分は金と時間を無駄にした。

・幸運を祈る。自分も2年間の悪夢を経て次の展開を望むよ。日本に悪い影響があることを願っているよ。人を入国貨物のように扱うなんて。

・日本の鎖国的な政策はまだ存在感を発揮しているようだね。大きな悲劇だ。日本で国際ビジネスを展開しようと考えていたのに。

・自分も日本でインターンすることを諦めた。2022年の3月31日から始めるはずだったけど、結局、韓国のソウルに変更したよ。

・助けて。2020年3月から待っている。自分の人生は台無しだよ。多大な債務を抱えている。学費や入学費を払うために借金している。どうすれば良いの。

自国民の生活を守ることは、政府が最も優先すべき重要な役割であり、大前提です。ただ、日本の味方を世界で増やすことで国民の豊かで安全な生活をこの世の中に導くことも、間違いなく政府の重要な役割です。

特に、世界の安全保障情勢が揺らいでいる昨今では、急務だと痛感します。外国人留学生や研究者は、日本に関心を寄せてくれており、味方になり得るとても貴重な存在です。

分断や格差を乗り越える、日本発の「新しい資本主義」で世界をリードしたいと岸田総理は宣言されています。「人への投資」とは、世界の若手世代も対象とし、しっかりと実践することが極めて重要です。

現在、民間有識者を加えて討議している「新しい資本主義」を国内だけに閉じてはならないと思います。国内に閉じるだけのものになると、世界をリードすることが不可能であることは明白です。

2月末までの水際対策の期限を終えて、現在のオミクロン株の感染による重症者・死者の数が低位に推移しているようでしたら、ただちに研究者・留学生の入国問題の是非に取り組んでいただきたいと思います。これからの時代の新しい資本主義の実現には、日本が世界の次世代と手を組むことが不可欠です。

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