ロシアに支配される恐怖。ウクライナへ降伏を勧める人が知らぬ現実

2022.03.24
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CNNとのインタビューで、「自国の存在が脅かされた場合にのみ」との条件をつけたものの、核兵器の使用を否定しなかったロシアのペスコフ報道官。しかしウクライナの人々は、軍事大国の脅しや激しい攻撃に屈することなく徹底した抵抗を続けています。国内メディアの出演者の中には、人命第一の観点からウクライナに降伏を勧める識者も存在しますが、そのような声を「歴史を知らない人の言うこと」とバッサリ斬るのは、元経済誌『プレジデント』編集長で国会議員秘書の経験もある、ITOMOS研究所所長の小倉健一さん。小倉さんはなぜそのように判断せざるを得ないのかを、ウクライナがロシアから受けてきた「圧政の歴史」を紐解き解説するとともに、すべての日本人に対して、ロシアの支配下に置かれることが何を意味するのかを学ぶべきだと警告しています。

プロフィール小倉健一おぐら・けんいち
ITOMOS研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。

敗色濃厚のプーチンが核爆弾を落とすとき。それでも勇敢にウクライナ人が戦う理由

ロシアがウクライナに対する軍事侵攻に踏み切り、現地では今もロシア軍とウクライナ軍の戦闘が続いている。

それにしても日本を含む欧米諸国のウクライナへの態度は、はっきり言って冷たい。アメリカは、ドイツにあるアメリカ軍基地を経由してウクライナに戦闘機を供与するというポーランド側の提案を即刻拒否してしまった。あっさり言ってしまえば、「自分の国は自分たちで守りなさい。多少の協力はする、プーチンを怒らせない範囲で」ということになるのだろう。

当然ながら、今回のウクライナ侵攻はプーチン、そしてロシアに問題がある。しかし、歴史的な視座に立てば、この侵攻は<米国の意志によるNATO(北大西洋条約機構)の東方拡大>に問題はある。

プーチンは繰り返し「NATOをジョージアとウクライナに拡大して、ロシアに敵対させるのは、絶対に容認できない」とレッドラインを示してきた。冷戦時代にソ連がキューバと軍事同盟を結ぶことをアメリカが容認しなかったように、プーチンはウクライナが(西側の軍事同盟である)NATOに入ることを許さなかったということだ。アメリカ人は自分たちの価値観が普遍的なものだと信じて、世界へ広めようとする悪いクセがある。核大国であるロシアと共存しなくてはいけないという「パワーオブバランス(勢力均衡)外交」を採用しなかったために、ウクライナにおいてアメリカ外交は完全に敗北したということだ。

平和を訴えるのも大事なのだろうが、心配になるのが日本の防衛力だ。日米同盟は、平和な時代には「立派な軍事同盟」とみえるのかもしれないが、いざ有事となったら米軍は在日米軍基地から一歩も出てこない可能性もある。合同軍事演習をしているからといって、米国が日本の戦争に巻き込まれる必然性は何もないのだ。これは私の懸念でなく、防衛関係者が一様に抱えている懸念である。日米同盟はより深化させていくにしても、防衛力の徹底強化が求められていよう。

孤軍奮闘が続く、ウクライナ軍。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、ロシアによる軍事侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、3月8日時点で215万人に達したが、それでも多くの人間が祖国ウクライナに残り、今、この瞬間でも圧倒的な戦力を有するロシア軍と勇敢に戦っている。

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