ロシア軍の言い訳
ロシアは、どうするのでしょうか?
ロシア軍にとって一番の課題は、「プーチンの体面をどうやって保つか?」です。重要なのは、この一点。
どうやって?
そもそもこの「特別軍事作戦」の宣言された目的は、「ウクライナのネオナチに8年間ジェノサイドされつづけてきた、ドネツク、ルガンスク人民共和国の民を守ること」でした。
プーチンは2月21日、ドネツク、ルガンスク人民共和国の独立を承認した。そして、「平和維持軍を派遣する」という話だった。
ところが2月24日に、ウクライナ全土への攻撃をはじめた。既述のように、ゼレンスキー政権を崩壊させ、傀儡大統領たてる。傀儡大統領は、
- クリミアをロシア領と認める
- ルガンスク、ドネツクの独立を認める
- NATOに加盟しないことを約束する
- 非軍事化する
ことなどを宣言する。
しかし、この作戦について、プーチンは公式に明かしたことはありません。だから、「もともとルガンスク、ドネツクを解放すれば、それでよかったのだよ」と言い訳できる。ついでに、ゼレンスキーが「NATOに入らなくてもいい。中立でもいい」といいはじめた。だから、
- ウクライナから、ルガンスク、ドネツクを事実上解放した
- ルガンスク、ドネツクとクリミアの間にあるマリウポリを制圧した
- ウクライナにNATO非加盟を約束させた
このあたりを落としどころにすれば、「プーチンの体面は保てる」(自分たちは、粛清を免れることができる)と考えているのでしょう。
つまり、これをもって「ロシアは勝利した!」と宣言する。もちろん、国際社会は、「プーチンは負けた!」と報道するでしょう。ですが、その情報は国民に知らせなければいい。
目論見通りになっても、ロシアの【戦略的敗北】は不可避
私は、ウクライナ侵攻がはじまる前から、「プーチンはウクライナとの戦争に勝っても負けても、【戦略的敗北】は避けられない」と書きつづけています。どういうことでしょうか?
2014年3月、プーチンは、ほぼ無血でウクライナからクリミアを奪いました。これは、【戦術的大勝利】です。しかし、欧米日の制裁で、その後ロシア経済はまったく成長しなくなった。2000年~08年、ロシア経済は年平均7%の成長をつづけていた。ところがクリミアを併合し、制裁を科せられた2014年から2020年まで、ロシアのGDPは、年平均0.38%しか成長していない。これが【戦略的敗北】の意味です。
そして、今回は、クリミア併合時とは比較にならない、【地獄の制裁】が科せられている。ロシアの経済成長率今年、マイナス8%~マイナス20%になるといわれています。
結局、2022年2月24日にはじまったウクライナ侵攻は、【プーチン政権おわりのはじまり】になるのです。
(無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』2022年3月27日号より一部抜粋)
image by: Gil Corzo / Shutterstock.com