核を放棄し侵略されたウクライナ。北朝鮮がミサイル発射を繰り返すワケ

 

朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、ミサイル発射の場面や、金正恩(キム・ジョンウン)が視察する様子を写した写真28枚を掲載し、朝鮮中央テレビも25日の発射時の映像を流した。映像は、金正恩らが火星17の格納庫から出てくる場面から始まり、金正恩は革ジャンにサングラス姿で、格納庫から火星17が運び出される直前のカウントダウンのような場面で、金正恩はサングラスを外し、真剣な表情で腕時計を確認している。ミサイルが発射された際には、金正恩は笑顔を見せ、兵士らと記念写真を撮る場面も紹介された。

金正恩は、新型ミサイル・火星17の発射実験の成功を確信していたのだろう。しかし、韓国国防省は、「16日にICBMの発射に失敗したことから北朝鮮内で住民の動揺が広がった。これを抑えるため、17年に発射実績のある火星15を急きょ打ち上げた」と分析し、24日に発射実験を行ったのは「火星17ではなく火星15」であったとしている。

北朝鮮はなぜ、ミサイル発射実験を繰り返すのか。

それはロシア対応に追われる米国に「自衛の核」を誇示するためで、ロシアによるウクライナ侵攻で「核は正義」「核なき国は侵略される」という「核大国が核なき小国を侵略する」という、“核の恫喝”を知らされたからである。

もっとも、ウクライナは、かつては核大国であった。ウクライナは1991年のソ連邦解体により独立した後、世界3位の核保有国として核兵器を放棄しない選択肢もあったが、94年12月に米英ロが安全保障を提供することを盛り込んだ「ブタペスト覚書」を締結し、96年6月に1,800余基の核弾頭とICBMをすべてロシアに返還・廃棄した。

しかし、28年経った現在、米英ロが約束したウクライナの安全保障はまったく機能していなかった。当時、ウクライナが核を放棄せず、核保有国の地位を維持していたら、ロシアはあえて侵攻できなかったはずだ。

金正恩は、ロシアのウクライナ侵攻を見ながら「大国は必ず約束を反故する。核を手放してはならない」と確信し、ウクライナの核放棄の前例を教訓にして絶対に核を放棄しないだろう。ロシアによるウクライナ侵攻は、金正恩の「核保有は自衛」との自説を正当化させた。

北朝鮮は最大60の核弾頭を有し、1発のICBMで多弾頭を搭載できる能力を備えつつあると言われており、「米本土への核攻撃能力をさらに高める」との指摘もある。

4月には、7度目の核実験を行うのではないかと言われている。4月15日は、故金日成(キム・イルソン)主席生誕110周年、4月25日は、朝鮮人民軍創建90周年を迎えるからだ。すでに、咸鏡北道吉州にある豊渓里の核実験場で未使用の第3坑道を使って、核実験を再開するとも言われている。

「核こそ正義、核あっての北朝鮮、核で米国を恫喝し、対米闘争で優位に優位に立つ」金正恩の自衛の核を米国に誇示する軍事挑発は、今後ますます強まるだろう。

※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2022年4月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。各月550円です。

北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で伝える宮塚利雄さんのメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2022年3月配信分
  • 【号外079】(宮塚代表出演)午後6時15分頃から秋田朝日放送で解説-令和4年3月24日(3/24)
  • 【153】尹錫悦韓国新大統領がゼレンスキー大統領から影響受ける?-令和4年3月20日配信(3/20)
  • 【152】ウクライナ侵攻と韓国大統領選への北朝鮮の思惑。宮塚利雄より初披露-令和4年3月5日配信(3/5)

2022年3月のバックナンバーを購入する

2022年2月配信分
  • \読者限定/2年ぶりの宮研新年会どうですか?講演会4月末に開催予定-令和4年2月28日(2/28)
  • 【151】ロッテと北朝鮮・中国(スピンオフ)。読者特典価格のお知らせ-令和4年2月20日配信(2/20)
  • 【150】韓国屈指のロッテ財閥を築き上げたカリスマ重光武雄の最期-令和4年2月5日配信(2/5)

2022年2月のバックナンバーを購入する

2022年1月配信分
  • 【149】ロッテ成功の2つの鍵。北朝鮮1月だけでミサイル4発-令和4年1月20日配信(1/20)
  • 【148】ロッテが韓国で財閥になったワケ。北朝鮮ミサイル発射の背景-令和4年1月5日配信(1/5)
  • 【号外077】<読者限定>ミニライブはいつでも視聴できます。必見はエアコン?-令和4年1月4日(1/4)

2022年1月のバックナンバーを購入する

2021年12月配信分
  • 【号外076】<感謝>宮塚コリア研究所12.18講演会@新宿レポート-令和3年12月31日(12/31)
  • 【号外075】<ライブ配信>30日午後5時からミニライブ-令和3年12月28日(12/28)
  • 【号外074】18日講演会アーカイブ公開。30日甲府ライブでの質問募集-令和3年12月26日(12/26)
  • 【147】金正恩政権10年、今後存続を左右するもの。焼肉店と冷麺の歴史-令和3年12月20日配信(12/20)
  • 【号外073】まぐまぐ大賞2021時事解説2位受賞。チュッペ読者特典提供-令和3年12月17日(12/17)
  • 【号外072】18日講演会ライブ紹介ページと田月仙さんのオペラ公演-令和3年12月14日(12/14)
  • 【146】北朝鮮イカゲーム見た高校生が終身刑。高知講演会内容報告ほか-令和3年12月5日配信(12/5)

2021年12月のバックナンバーを購入する

2021年11月配信分
  • 【145】日本は真剣に専守防衛の議論をするべき時。まぐまぐ大賞の応援を-令和3年11月20日配信(11/20)
  • 【144】北朝鮮経済悪化で登場のトンピョとは?映画ザ・モールでわかること-令和3年11月5日配信(11/5)
  • 【号外070】田月仙さんのザ・ラストクイーンを見て(テキスト形式)-令和3年11月1日(11/3)
  • 【号外069】田月仙さんのザ・ラストクイーンを見て(HTML形式)-令和3年11月1日(11/3)
  • 【号外068】高知講演会のまぐまぐ!Live中止と号外配信について-令和3年11月1日(11/1)

2021年11月のバックナンバーを購入する

2021年10月配信分
  • 【号外067】ザ・モール公開と高知と東京の講演会は読者特典で無料参加-令和3年10月31日(10/31)
  • 【143】北朝鮮金正恩を訴えた日本初の裁判。なぜミサイル連発するのか?-令和3年10月20日配信(10/20)
  • 【号外066】高知支部講演会のお知らせ\11月20日(土)/-令和3年10月14日(10/14)
  • 【号外065】宮塚寿美子の映画「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん。」を見て-令和3年10月7日(10/7)
  • 【142】北のミサイルをスルーする文在寅。どうする岸田新総理?-令和3年10月5日配信(10/5)

2021年10月のバックナンバーを購入する

2021年9月配信分
  • 【141】北朝鮮のミサイル開発に日本は?疑惑の金正恩のある一瞬-令和3年9月20日配信(9/20)
  • 【号外064】北朝鮮が新開発した長距離巡航ミサイル発射の意図(HTML形式)-令和3年9月16日(9/16)
  • 【号外063】伊藤孝司写真展「平壌の人びと」特別レポート(HTML形式)-令和3年9月6日(9/6)
  • 【140】金正恩が軍統帥権を喪失か?改定された党規約から読み解く-令和3年9月5日配信(9/5)
  • 【号外062】スマホアプリで視聴できる28日のライブ配信動画の公開について-令和3年9月4日(9/4)

2021年9月のバックナンバーを購入する

image by: 朝鮮労働党機関紙『労働新聞』公式サイト

宮塚利雄この著者の記事一覧

元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」 』

【著者】 宮塚利雄 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 5日・20日 発行予定

print
いま読まれてます

  • 核を放棄し侵略されたウクライナ。北朝鮮がミサイル発射を繰り返すワケ
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け