ホンマでっか池田教授が指摘。政府やマスコミに利用される「専門家」への違和感

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連日連夜テレビ番組に登場する、さまざまな分野の専門家と呼ばれる人々。私たち市井の人間は、「専門家」と聞いただけで彼らの言説を疑うことなく鵜呑みにしがちですが、果たして無条件に信用してもいいものなのでしょうか。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』では「ホンマでっか!? TV」でもおなじみの池田清彦教授が、マスコミが扱う専門家の意見を受け取る際に注意すべき点を紹介。さらに時の政府やマスコミが、専門家をいいように利用してきたことを実例を上げつつ批判するとともに、現在池田教授が気になるという「ある流れ」について綴っています。

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専門家は信用できるのか

政治や経済や新型コロナや地球温暖化についてSNSなどで発信すると、専門家でないから信用できないとか、素人は口出しするなと言わんばかりのリプライがあって呆れる。政治や経済はともかく、地球温暖化に関しては、私は並の専門家より詳しいと思うけれども、「お前は専門家じゃないだろ」という文言が恫喝に使えると思っている時点で、こういった発言をする人は終わっている。今は、パソコンさえあれば、大概のことは調べられる時代なので、勉強を怠っている専門家よりも、勉強している素人の方が、正確な情報をよく知っているのだ。

そもそも専門家というのは、いったい何をもってそう言うのかという所からして結構ややこしい。現代では、何らかの専門分野で学位(通常は博士)を取って、大学や研究所に職を得て、給料をもらっている人のことを専門家というらしいが、学問はものすごく細分化されているので、通常は自分が研究している分野から少し外れてしまえば、そこでの最先端の研究については知らないのが普通だろう。

私は動物生態学の分野で学位を取っているので、大きく分ければ生物学の専門家だが、生物学の分野は膨大で、知らないことの方がはるかに多い。それでも、生半可な知識で生物(生物学)について発言しても、お前は専門家じゃないだろうと言われることがないのは不思議だ。例えば、生態学会の中で、○○の専門家という話になると、シロアリの生態の専門家とか、ある地方の植物相の専門家とかいう人はいても、生態学の専門家と名乗る人はいない。しかし、マスコミが紹介する専門家の肩書は、経済の専門家とか、環境の専門家とか、生物学の専門家とかいった、大雑把なくくりであることが普通だ。

そう考えると、専門家というのはマスコミや政府が自分たちの意見を主張したいときの権威づけのために利用する肩書みたいなものだ。だから、マスコミに出てくる専門家の意見は、政治的なバイアスがかかっていると思った方がいい。後で、間違いであると言われてバッシングされたときに、専門家の意見に従っただけだと言えば、責任を免れる。

大学や研究所に勤めて給料をもらっている研究者を、専門家と看做すという定義に照らすならば、例えば、チャールズ・ダーウィンは専門家ではなかった。自費で研究をしているアマチュアだった。現在は「在野の研究者」などと言って自費で研究をしている人を見下す風潮があるが、当時のイギリスの研究者の中で、ダーウィンを見下す人はいなかったはずだ。

職業的研究者であろうがアマチュアであろうが、科学的知見は中身が問題であって、肩書は問題でないことは誰でもわかる。ほとんどの人に分からないのは、誰の意見が正しくて(あるいは合理的で)、誰の意見が間違っているか(あるいは非合理的か)ということだ。それで、専門家の意見を重宝するようになるが、学問体系が定まっていない分野、例えば新型コロナ感染症への対応とか、人為的温暖化の是非とかについては、専門家はしばしば間違えて、しかも間違いを訂正しないで、間違った方法がそのまま踏襲されても、知らんぷりをしていることが多い。

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