ウクライナ戦争で“大儲け”のアメリカ。最も利を得たバイデンの胸中

2022.04.22
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ロシア軍がウクライナに侵攻して2ヶ月が経過しようとしている。ロシア軍がウクライナの首都キーウ近郊から撤退し、東部のドンバス地方(ドネツク、ルハンシクの2州)や南東部の都市マリウポリの制圧に攻撃の軸足をシフトした4月以降は、両国による停戦協議の動きは停滞し、戦争の長期化、もっと言えば泥沼化の可能性が高くなっている。

清水克彦(しみず・かつひこ)プロフィール
政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師。愛媛県今治市生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。アメリカ留学後、キャスター、報道ワイド番組チーフプロデューサーなどを歴任。現在は報道デスク兼解説委員のかたわら執筆、講演活動もこなす。著書はベストセラー『頭のいい子が育つパパの習慣』(PHP文庫)、『台湾有事』『安倍政権の罠』(ともに平凡社新書)、『ラジオ記者、走る』(新潮新書)、『人生、降りた方がことがいっぱいある』(青春出版社)、『40代あなたが今やるべきこと』(中経の文庫)、『ゼレンスキー勇気の言葉100』(ワニブックス)ほか多数。

ロシアの戦い方は「短期決戦型」

歴史をひもとけば、ロシアによる戦争は、旧ソ連時代から短期のものが多かった。短いときは数日、長い場合でも数か月程度だ。いくつか例を挙げてみよう。

  • 1956年 ソ連軍によるハンガリー軍事侵攻 (1週間)
  • 1968年 ソ連軍を含むワルシャワ条約機構軍によるプラハ侵攻 (2日間)
  • 2008年 グルジア侵攻 (2週間)
  • 2014年 クリミア半島併合 (約1か月半)

このように、これまでのロシア(旧ソ連)は、一気に攻め込んで「利」を得るという短期激烈決戦(ショートシャープウォー)で勝利を収めてきたのである。ところが今回は様相が異なる。

長期化は不可避

4月5日、舞台はアメリカ連邦議会下院の公聴会。発言を求められたアメリカ軍制服組のトップ、統合参謀本部議長のマーク・ミリーは、「これは非常に長期化する争いだ。10年かかるかはわからないが、少なくとも数年であることは間違いない」と述べ、アメリカをはじめ、NATO(北大西洋条約機構)、それにウクライナを支援している国々は、長期にわたり関与することになるとの見通しを示した。

また、国務長官、アントニー・ブリンケンも、同盟国に対し、ウクライナでの戦闘は今年末までには続く可能性があると伝えている。

そのアメリカでは、ワシントンの有力なシンクタンクの1つ、CSIS(戦略国際研究所)が、国家間の武力紛争に関して興味深い調査結果を示している。

国家間の武力紛争
・その26%が1か月以内に終結し、そのうちの半分近くが最終的な停戦もしくは和平合意に至る。
・また、25%が1か月から1年の間に終結し、そのうちの4分の1が最終的な停戦に至る。

これだけを見ても、紛争や戦争は、長期化すればするほど停戦合意への時間が長くなり、和平に至る確率も下がる。ましてや、1年以内で終結できないものは、さらに長期化してしまい、和平への道はさらに遠のいてしまうといことになる。

1つの目安が5月9日、ロシアの対独戦勝記念日である。この日は、ロシア国民が、旧ソ連の勝利を象徴する「ゲオルギーのリボン」を胸に着け、愛国心と祝典の高揚感に浸る特別な日だ。

この日までに、ロシアがドンバス地方を完全に近い形で制圧できていれば、プーチン大統領による何らかの勝利宣言があり、ウクライナ側への呼びかけも行われる可能性がないとは言えない。

しかし、プーチン大統領の狙いは、ドンバス地方の完全制圧(親ロシア系の住民をウクライナから解放する)というだけにとどまらず、あくまで首都キーウを陥落させ、ウクライナに親ロシア派政権を樹立し、NATOの東方拡大に歯止めをかけることにある。

事実、ロシア軍は東部での攻撃を強化し、再びキーウにも迫っている。NATO加盟を目指すフィンランド国境近くにもミサイルシステムを移動させるなど、むしろ戦線を拡大しようとしているかのように見える。

ゼレンスキー大統領は、ロシアが核兵器や化学兵器を使用する可能性があると、国際社会に向けて警告したが、仮にそこまでエスカレートすれば、事態はさらに深刻化する。

ウクライナ軍のこれまでの想定以上の善戦、アメリカなどによる軍事物資の支援なども考慮すれば、停戦というゴールはまだまだ先と言わざるを得ない。

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