プーチンの狂気に闘士が立つ。脱原発の女性が新潟知事選出馬のワケ

 

このような情勢を踏まえても、片桐氏の決意は揺るがない。出馬表明後、片桐氏はネット動画における米山隆一氏との対談で、こう動機を語った。

「1か月前まで立候補など考えていなかったが、ウクライナとロシアの戦争が始まって、プーチンは核戦争も辞さないような発言をし、ザポリージャ原発が攻撃された。柏崎刈羽原発は7号機まで全部動いたら世界最大の原発。中国や北朝鮮の脅威もあり、いろんな戦争の中でそんなところをターゲットにされたら、たまらない。子どもの未来、新潟の未来を考えると、なんとか再稼働を止めてもらいたい。知事、柏崎市長、刈羽村長は再稼働をやめさせる力があると聞いたので、勇気をもって、自分のありったけの生きざまで訴えていきたいとの一念でした」

現職候補の花角知事は原発再稼働について、安全性をめぐる県独自の「三つの検証」と、県技術委員会による安全性確認の結果を待って議論を始めると言い、はっきりした態度を示していないが、それは原発を知事選の争点にしないためにすぎない。

東電にとって、柏崎刈羽原発の再稼働は、経営再建の柱だ。22年度以降の再稼働をめざしているというが、安全性に関する新潟県民の不信の根は深い。これまでに柏崎刈羽原発で数々の不祥事を起こし、テロ対策の不備のほか、7号機の配管に約1,600カ所の溶接不良が見つかるなど、次々とずさん工事や虚偽報告が発覚している。なにより、福島第一原発事故を起こしながら、経営者が誰一人として責任をとっていない。

それなのに、ロシアのウクライナ侵略を契機として、原発再稼働を求める声は高まる一方である。自民党の電力安定供給推進議員連盟が「ロシアからの原油やLNGの輸入が滞る可能性がある」として早期再稼働を求める決議をしたのも、そうした動きの一つだ。

しかしそれは、原発再稼働のリスクを度外視した議論だ。稼働中の原発が停止中のそれに比べて、はるかに危険をはらんでいることは言うまでもない。

1984年、外務省は原発がテロなどの攻撃を受けた場合どのような影響が出るかを内部資料としてまとめた。そこには、電源喪失、格納容器破壊、原子炉の破壊などが想定されていた。

原発にミサイルが撃ち込まれたら、鉄筋コンクリートの格納容器を貫通してしまう。爆発は起こらなくとも、放射性物質の拡散による影響は、10メガトンの水爆をもはるかに上回るといわれる。

「国の言いなりにはなりません。再稼働はしない」。「私はまったくの無所属なのでどなたでも応援してくださる方と手を握っていこうと思っています」。出馬表明で、片桐氏はきっぱり言った。この歯切れの良さと包容力は、大きな武器といえる。社民、共産が推薦を決め、立憲は自主投票だが、党派を超えた支援の輪が広がりそうな気配だ。

2016年の新潟県知事選を思い返してみたい。柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な泉田裕彦知事が突然出馬をとりやめたため、当初は自公両党が推薦する長岡市長、森民夫氏の楽勝とみられていた。当時の民進党も独自候補の擁立をあきらめ、自主投票とした。

ところが、告示直前になって、衆院新潟5区の民進党公認内定者だった米山隆一氏が無所属での出馬を表明し、原発再稼働に慎重な姿勢を打ち出すと、状況は一変した。共産、自由、社民の三党が米山氏を推薦する一方、民進党は森支持にまわった連合に気を使い、当初は様子見のかまえだったが、終盤にかけて有力議員や党幹部が続々と新潟入りし、米山氏の当選につなげた。

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