食堂店主が高齢化のため、息子さんが後を継ぎましたが、母親が生み出した、牛めしのタレのレシピを忠実に守り、当時のままの味を作り続けています。カレーもルゥを一から手づくりし、昔ながらの黄色いカレーを提供しています。
この3品だけを56年作り続けることは、並大抵のことではありません。母と息子が、手を抜かず、毎日同じものを淡々と作っているのです。
仕事とは言え、飽きずにずっと続けるには、強い精神力が必要です。しかし店主は、もうすでに超越しているかのようです。黙々と同じ動作を繰り返していることに、老舗の風格さえを感じます。
そんな繁盛しているお店ですが、コロナの波には太刀打ちできず、危機的状況が訪れました。外食が減った上に、大学がリモート授業となったことで、学生たちが周辺からいなくなったのです。
危険な状況に陥り、仕方なく2ヵ月間休業していたところ、お店の危機を知った大学のOB・OGたちが、売り上げを支えるために、食べに来てくれるようになったのです。
また、OB・OGがECサイトを立ち上げてくれ、ネット販売をすることもできました。さらに、テイクアウトやデリバリーも始め、閉店の危機は免れたのです。
これは、学生たちの恩返し。学業の苦労や親元を離れた寂しさを、お腹いっぱいになることで、しばし忘れさせてくれたのが、この食堂だったのです。
お店の壁には、卒業していった学生たちの寄せ書きが飾られています。本当に愛されているお店だということがわかります。
お客さまとの深い繋がり。客商売のあるべき姿なのではないでしょうか。
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