動き始めた上海。長期ロックダウンのダメージからの回復策はあるか?

 

いずれにせよオミクロン株の拡大下で中国経済は、短期的には感染対策で落ち込んだ消費や観光、交通などのダメージを、輸出やインフラ投資で補おうとしている。

今年の第1四半期、コロナ対策でインフラ投資が大きく伸びたのは典型的だ。だがインフラ投資の拡大は財政健全化を犠牲にするという問題がつきまとう。長期的な視点から否定的な見方も多い。当然、日常を取り戻した後には修正を迫られる政策だ。

ただ、個人消費は中国が日常を取り戻せばある程度の回復は見込まれる。中国は西側先進国のような経済成長モデルを考えていて、第三次産業の育成に力を入れているからだ。また個人消費を盛り上げるために労働者の賃金を増やす政策も進めていて第1四半期の可処分所得も対前年比で6・3%増と成長率(4・8%)に比べて高いことが分かる。

注目すべきはポストコロナの着地点として習近平政権がかなり本気で「技術大国」化を進めようとしていることだ。

経済が振るわないときの中国メディアの特徴は、悪い数字には触れず、良い数字だけを選んで「好調だ」と報じることだ。先週も触れたが第1四半期、ハイテク産業への投資が対前年比32・7%と大幅に伸び、なかでも航空宇宙分野は22・4%、電子通信設備は15・7%、新エネルギー車は140・8%だったと書いた。

コロナ禍の逆風下でも高付加価値、ハイテク、デジタル分野は堅調に伸びていることが見て取れるのだが、この裏には18大(中国共産党第18回全国代表大会)以後、習政権が進めてきた政策がある。なかでも最近とくに目立つのが2つの傾向だ。1つは、国が明らかに中小・零細企業の育成に力を入れ始めたこと。もう1つがそうした企業で働く現場の技術者の育成である。

デシタル経済やハイテク化などときけば少なくとも大学院を卒業したエンジニアやそうした人材の受け皿である国有大企業をイメージしがちだ。しかし、習政権が注目するのは大企業からの注文に応えて部品を供給する中小・零細企業であり、そこで働く匠だ。大企業においてもより現場に近い技術者だ。(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年5月15日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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image by:Graeme Kennedy/Shutterstock.com

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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